第28話 332対……
あれから時間もすぎて日が傾き始めた頃には旗をつけた生徒が少なくなっていたのだった。
「クソッ! 全員で俺を守れ! 責める事は考えるな! 守りだけに徹しろ!」
なんて声も遠くから聞こえてくる。時間が経つにつれて勢力を伸ばしていたグループは攻撃と守り二手にパーティを分けて戦っているようだけど、そうじゃないグループは守りだけで精一杯のようだ。
かく言う俺も風音の言いつけを守り全く戦闘していないため、部下は0人の撃破数も0人だ。
「はぁはぁ! 相手は1人だぞ! なぜ旗が取れないんだ!」
俺を取り囲んでいる1人が苦しそうにそう言った。
「ここで負けるとカニが食えないからなぁ! 意地でも生き残ってやるぜ!」
今日は祝勝会をすると俺の中ではすでに決まっているのだ。
「カニィ? なんの話をしているだ! 他の奴らが来る前にこいつを落とすぞ!」
頭に旗を付けている生徒がそういうと……
「あぁ!!」
と俺を取り囲む8人の生徒が声を上げる。
「峰打ちだから恨むなよ!」
そう言って顔も見たことがない生徒が剣を振りかざしてきた。
「剣とか人に向けちゃいけないんだぞ!」
俺はそれを体を捻って避ける。
「さっきからなんなんだこいつの人間離れした動きは!」
俺からも攻撃したいけど攻撃したら風音に怒られるしなー。
「どうっすかなー」
そんな事を言いながら攻撃を避け続ける。
「……はぁはぁはぁはぁ」
しばらくすると俺を取り囲んでいた人達はとうとう座り込んでしまった。
「ん? もうバテたのか?」
全員疲労困憊と言わんばかりの表情で俺を睨みつけている。
「はぁはぁ、フィジカルお化けかよ……」
頭に旗をつけたの男は下を向いてそんな事を言っている。
……もう攻撃する気力もなさそうだ。
「よし、じゃあ旗とるか」
別に本気を出しているわけじゃないし、この旗をとっても風音から怒られることはないだろう。
そう思って近づいていると矢が飛んできた。
「……この矢は」
俺の旗を狙って一直線に飛んできた氷の矢を掴み飛んできた方向を見ると楓がいた。
「やっぱりまだ生き残っていたのね、天道くん」
と言って微笑んでくる楓だが、攻撃してからいう言葉ではないと思う。
「当たり前だ、優勝狙ってるからな!」
「私も一位を狙っているの」
そう言いながらも俺の近くでへばっていた男の旗を弓で射る。
その旗の取り方アリなんだ。と思いつつも楓の方を見ると後ろから何人もの生徒がついてきていた。
中には果穂や哲也、風香などの見た事あるメンツもいる。
「えー、楓も狙ってんのかよ。でも俺もカニのために負けるわけにはいかないからなー。……本気は出さないけど半分くらいの力出しちゃおっかなー」
俺が勝ったら2人との祝勝会でカニを食べるんだからな。
そして俺は結局一位になるには相手を倒すしかないことに気づいてしまった。
本気さえ出さなければ風音も文句はないだろう。
……そういえば、風音はまだ生き残っているのかな?
「……なんの話か分からないけど、そっちもやる気のようね」
楓を含む全員の顔つきが変わり俺へ向けて構えをとる。
「勿論、降参するなッ!?」
突然後ろから敵意のようなものを感じたので咄嗟に体を屈めて避ける。
「ッく、不意打ちでもダメか……」
上を向くと風音が少し悔しそうな顔をしていた。俺が屈んでなければ俺の旗を取っていただろう位置にてがあった。
「風音!? なんで後ろから!」
風音にはまだ旗がついている。つまり誰にも倒されていないはず、なのにどうして……
「天道、これ以上目立つ真似をするな」
「まさか……」
2人とも俺を倒すために手を組んだのか!?
「そうだ。と言っても手遅れだったがな。本来であれば中盤に倒すつもりでいたが、生き残りは私達3人だけだからな」
「なに!? もうそんなに時間経ってんのか!?」
そういえば全然争いの声が聞こえない。
「ええ、もうゲームも終盤よ」
「それは分かったけど2対1とか卑怯だぞ!」
「2対1? いいえ、これは一年生全体の332対1の勝負よ!」
俺がそう言うと楓はイヤミったらしい笑みを見せながらそう言った。
その言葉の後に風音の後ろからも楓のチームと同じくらいの人が出てきたのだった。
「いいぜ、上等だー! 本気を出さない程度に相手してやんよ!」
こっちだってカニがかかってるからな。ただではやられないぞ!
突然地面が割れて奇妙な洞窟に落っこちてしまいました〜5年後に地上に戻ると地球がおかしな事になってました。ダンジョン?冒険者?スキル?お前ら頭大丈夫か?〜 コーラ @ko-ra
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