第27話 実技テスト!
「……暇だ」
俺は体育館近くのベンチに座りぼーっと過ごす。
携帯で時間を確認するとまだ45分だ。あと15分も待たないといけないのか。
「翔、暇なの?」
ぼけーっと空を見ていると声をかけらた。声がした方向を向くとちひろがいた。
「あっ、ちひろかー。そう暇なの。そっちは手伝いとかいいのか?」
手伝いで来ているのにこんなところにいていいのだろうか?
「これから試験が始まるまでの間は私たちも自由時間だしね、翔の方こそいいの? 他の一年生は武器をレンタルに行ったり色々しているみたいだけど……」
「俺の武器はこの体だからなー。ダンジョンにいた時も武器なんて使ったことがないから、今更使えと言われても逆に難しいしなー」
俺は手をグーパーグーパーしながらちひろに言った。ちひろはそれを見ると少し笑った。
「確かに今まで使ってない武器は使いづらいものね」
なんて話しているとカシャッとカメラで撮られたような音がした。
「ふっふっふっ、三股の証拠押さえたり!」
カメラの音がした方から出てきたのはなぎだった。
「あっ、お前好き放題記事にしやがって! あの三股記事のせいで色んな人から睨まれるんだぞ!」
今までなぎに会えなかったせいで文句も言えなかったがあの記事が出て以降俺の顔を見るたびに睨みつけてくる人が多いのだ。
「でも事実でしょ? ちーちゃんの事もちひろって呼んでるみたいだし」
ちーちゃんって呼ぶってことはちひろとは友達なのだろうか?
「ちーちゃんって友達なの?」
俺はちひろに聞くとちひろは頷いた。
「ええ、一年生の時からずっと同じクラスだったからね。それとなぎ、私一度注意したわよね? 翔とは会食で知り合った良き友人だと……もう一度注意させるのかしら?」
と優しい口調でちひろはなぎに注意した。やっぱりちひろっていいやつだな。
「……えー、ちーちゃんだって楽しそうにしてたじゃん! 天道くん! ちーちゃんが自然な笑顔を見せることなんて滅多にないんだよ!」
と言われて俺は頭にはてなマークを浮かべる。自然な笑顔ってなんだよ。
「ほら、ちーちゃんって時々怖い笑い方するでしょ!」
俺が不思議に思っていることがバレたのかそんな説明をされる。
「あー、なるほど。あれは怖かった」
それを言われてピンときた。この前風音に話していた時の笑みあの笑みは確かに怖かったもんな。
「もう! 翔も何を言ってるの!」
とちひろは怒って俺達は笑った。
そんな時ふと俺がもしも穴に落ちていなければちひろやなぎと同級生だった未来もあったんじゃないか? と考えてしまった。
そう考えるとなんだか寂しくなる。風音や楓と同じクラスになれたのは嬉しいけど、実際俺は年上だ。
本来ならちひろ達と同級生のはずなのだ。
「ん? 天道くんどうかしたの?」
俺が考え込んでいたせいか、なぎに心配されてしまった。
「やっ、なんでもない! これからの試験のこと考えてた」
「……そうだ! この試験が終わったらお疲れ会をしましょう! なぎも一緒に3人で!」
と突然、ちひろがそんな事を言い始めた。
「え? 私はいいけどなんで急に?」
なぎも突然の提案に戸惑っているようだ。
「俺もいいけど、なんで?」
「私がそういう気分だったから? 因みに全員拒否権はありませーん」
と小悪魔な笑みを浮かべるちひろ。
「えー。ちーちゃんっていつもそうだよねー。まあ断ったらあとが怖いし私は参加するけどね!」
あとが怖いってどういう事だよ。
「うん、じゃあ俺も参加する!」
「はい! じゃあそういう事で翔はまずこの試験頑張って!」
ちひろはそう言って笑顔で応援してくれた。
「そうね! 天道くんが上位になれば新聞的にも美味しい……じゃなくて知りあいの後輩には頑張ってほしいもんね!」
なぎの本音が前半部分に漏れている。応援してくれるのは嬉しいけど素直に喜べない……なんでだ?
「おう! じゃあ軽く優勝とっちゃうか!」
俺はベンチに登って上を指さす。
そこをなぎに写真で撮られてしまった。
「新聞のタイトルは……まさかの優勝宣言! 三股男念願の優勝なるか。ね」
もうなぎの言う事は無視しよう。俺はそう心の中で誓うのだった。
『あーマイクテスト。マイクテスト……これから試験を始める! みんな怪我せんよう頑張りや!』
と言う声と同時に遠くから爆発音が聞こえ始めた。
「始まったか……」
「頑張って!」
「頑張れ!」
「今夜はカニ鍋だぁ!」
祝勝会といえばカニ! カニだよな? 俺はそう思いながら走りだしたのだった。
「さあてと……これからどうするかな?」
とりあえず走ってきたものの何をするかは全く考えていない。
というか本気を出さずにどうやったら戦えるのだろうか?
「ん!?」
「三股男!?」
「覚悟!!」
辺りをキョロキョロとしていると頭に旗をつけた3人組に囲まれた。
全員顔を知らないから違うクラスだろう。そして三人とも刀を持っている。
「やっ、三股は誤解だって! ってかなんで3人とも旗がついてるの?」
俺を取り囲む三人は頭に旗をつけたままだがお互いがお互いを襲う気配がない。
「俺たちは!」
「友達だから!」
「協力しているのさ!」
この喋り方が好きなのだろうか。
でもなるほど、そう言う手もありなのか。裏切らない友達を作っておけばこんな事もできるのか。
俺も風音と楓に協力して貰えばよかったかな……
いや、2人の場合普通に断られそうだ。
「そんな手があったのか! 俺とも協力してくれないか!」
本気を出すなって言われたし敵を倒すなって事だろう。それならこいつらみたいに協力して戦いたい。
「いいぞ!」
「と言いたいところだが!」
「三股は男の……いや人類の敵だ!」
いいぞと言われて喜んだがぬか喜びだったらしい。いい加減この喋り方はうんざりだ。
「覚悟!」
そんな事を考えていると突然三人が同時に襲いかかってきた。
俺はきた刀を全て避けて旗を取ろうとした手を弾いた。
「バカな!」
「俺達の連携が!」
「きかないだと!」
むむむ、このまま戦ってもいいが少しこいつら厄介だな。
「くらえっ俺の必殺技! じゃあなー」
その場でシュパシュパとかっこいい動きをしてから、俺は逃げることにした。戦うわけにも行かないがここで負けてやるわけにも行かない。
なら俺に残されたのは逃げると言う方法だけだ。
「なにぃ!?」
「逃すか!」
「早いぞあいつ……」
三人とも追いかけてくるが俺が全力で逃げれば捕まるわけもなく逃げ切ることに成功するのだった。
「ふっふっふっ……私だってこのままじゃ終われませんよ!」
俺が走っていると突然目の前にそんな事を言いながら現れる人がいた。
その人の正体は頭の旗を無くした果穂だった。
果穂はゾンビのようにゆっくりと動いてこちらを見ながらふっふっふっと笑っている。どうやら正気じゃないようだ。
「果穂! 誰にやられたんだ!」
くそぅ! 果穂をこんな姿にしたのは誰なんだ!?
「楓様ですよぉ!」
キェーッと叫びような勢いで俺に突っ込んできた果穂を避ける。
「楓ぇ! 俺はお前を許さんゾォ!」
と空を見上げて叫んでいると突然氷の矢が飛んできた。
俺はそれをキャッチする。
人がふざけている時にこんなもの放つなんて犯人には人の心はないだろうか。
「これを止めるなんてさすがね、天道くん! 貴方を倒すにはもう少しに戦力がいるわね……行くわよ果穂! ついてきなさい」
声のした方を向くと何故か楓が自慢げな顔で立っていた。
「はい! 楓様!」
そして楓は果穂は嵐のような速度で姿を消すのだった。
「突然出てきたと思ったらなんだったんだあいつは……」
1人残された俺はそう呟くのだった。
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