第14話 望まない妊娠

ステファニーは修道院に来て1ヶ月も経つと、ここでの生活にも慣れて自分で身支度ができるようになり、草取りや皿洗いなど簡単な仕事も任せられるようになった。するとアポロニアは、付属孤児院の子供達に文字を教えてみるのはどうかとステファニーに提案した。ステファニーはその提案を受け入れて週に何回か子供達に文字を教えるようになり、生活が充実するようになって張り合いも出てきた。ただ、最近やたら疲れやすく、昼間も眠くなることが多くなったが、急に生活環境が変わったせいだとステファニーは思っていた。


その日の修道院の昼食は、レンズ豆スープにパンだった。修道院では、昼食が唯一温かい食事で、レンズ豆スープはよく出るメニューだった。最初にこのスープを飲んだ時は、中身がレンズ豆だけでなんて味気ないんだろうと思ったステファニーだったが、慣れれば1日1回の温かい食事が楽しみになった。だが、その日はいつものスープの匂いが気持ち悪く感じた。大半を残してスプーンを置くと、アポロニアがどうしたのと心配そうに聞いた。


昼食後の仕事を休ませてもらって横になっていると、アポロニアが村から医師を連れてきた。村の医師は男性しかいないので、医師だけは男子禁制の例外になっている。


「前回はいつ月のものがありましたか?」


ステファニーははっとした。そう言えば、修道院に入ってから一度も月のものが来ていなかった。最初は色々ありすぎて忘れていたが、ここのところは生活が激変したからだと思っていた、というか思いたかったのかもしれない。医師はそれから色々と問診し、ステファニーの妊娠を確定した。


ステファニーは、純潔を奪われたあの凌辱を思い出してしまい、目の前が真っ暗になった。あの汚らわしい男達の誰かの子供かと思うとステファニーは気がふれそうになる。でも教会が堕胎を許さない以上、例え修道院を出ても闇医師の下でもない限り、堕胎できないのだ。どんな事情があっても堕胎を許さない教会の力が強いルクス王国では、医療知識がろくにない闇医師を利用して二度と子供を産めない身体になったり、それどころか命までなくしたりする女性も少なくない。さすがにステファニーもそんな危険を犯したくなかった。かと言ってあの強姦犯との繋がりが自分のお腹の中に宿っていると思うと不快で仕方なく、どんどん焦燥していった。

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