第11話 ハッピーエンド

彼は前世の話などしない。

私が勝手に前世の話を聞かせることはある。


それが真実であるかはどこまでも行ってもわからない話を男性的な論理的思考の彼が易々と信じるわけもなく、ただ相槌を打つだけだ。


そう、それでいいのだ。

ただ傍に彼が居てくれればいい。



フルーツの紅茶を作ろう。


ホットワインを作ろう。


リンゴのケーキを焼こう。


彼はパソコンで作業中。


私は彼の傍らで文章を書いた。


『ホットワイン』という詩だ。




赤い夕焼けが見えて消えて黒い夜の到来


「明日の朝までこの闇に隠れていられるね

だから2人で隠れていよう」と私が提案すると


彼は「なんやそれ」って笑顔を浮かべた


シナモンだとかオレンジだとかを入れた

ホットワインをポットに作るのは

2人の共同作業


一緒に闇の中で飲もうね


音楽は掛けても掛けなくてもいいよ


どっちでも楽しそうだから


『ホットワイン』




とても幸せ。


がんばって書いたの

大好きなあなたのこと。


あの夏の水のことも。

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あなたのこと 夏の水 ラン @ran_kikyou

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