第9話 希望の光

 今日はサーレットさんが半日で帰ってきた。何かの手紙を持っている。


「ニュースだ、この街の医術会が魔導結晶化症の手術を始めたらしい」

「え、ホント?」

「ああ本当だ、ただ、多額のお金がかかる」


 父親も隣にいて、腕を組み考え込む。


「すまない、家に余分なお金は無い」


 皆がふさぎ込むと……。


「僕が借金をします。炭焼き窯で働けば一年で返せる金額です」


 サーレットさんは迷い無く借金の提案をする。それは、遠分は旅をして賢者としての力を高める事を諦めることになる。


「ありがとう、サーレットさん」

「お礼はいい、成功率の低い手術だ、残り短い時間を早めてしまうかもしれない」


 その言葉にわたしも決意が必要だと感じる。


 数日後、この街の医術会の総本部に来ていた。サーレットさんは重い金貨の袋を持ち、改めて、サーレットさんが本気であることを感じていた。


 それから、わたしは最上階の病室に入院して手術の時を待つ。

入院初日は検査、検査が行われた。不安な日々が続き、手術の日が近づく。


 当日になるとサーレットさんが来てくれた。


「サーレットさん、さっき麻酔を飲んだの、次、目覚めたらキスしてくれる?」

「ああ、アリータ、愛している」


 薄れ行く意識の中で生きることを誓った。


 ―――1年後……。


 わたしは生きていた。サーレットさんがした借金は返し終わり。


 旅に出ると言う。


「アリータ、一緒に旅をしてくれないか?」

「はい」


 それはプロポーズであった。


 わたしの体は健康になり旅ができるのであった。 世界が待っている。


 これからもサーレットとの日々が続くのだ。

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キスの甘さ。 霜花 桔梗 @myosotis2

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