第8話 選んでくれた

 それから、サリアはプレゼント攻撃を仕掛けてきた。


 砂糖のこれでもかと乗っているクッキー。容器に入ったゼリー菓子。ふわふわのシュークリームと続いていた。


 捨てるのももったいないと思い家族で食べるがどれも甘ったるい。菓子を食べた後の父親の反応は腕を組み唸っている。令嬢は貴族の一人娘でわがままし放題と評判が悪い。


「アリータ、すまない、貴族さまには逆らえないのだよ」


 職人気質の父親が珍しく弱気でいる。


「謝らないで、わたしの問題だから一人で解決するわ」


 サーレットさんも頷き、令嬢の撃退を誓う。そして、次のサーレットさんの休日の事である。気分は決戦であった。


 馬車が玄関に着くと令嬢が下りてくる。


「賢者さま、また、来てしまいました」

「あぁ」


 サーレットさんは不機嫌そうに返事だけは返す。とにかく、令嬢であるサリアを中庭に通す。


「賢者さま、宝石はお好きでして?」


 サーレットさんは首を横に振り、サリアを拒絶する。


「僕はアリータを愛している」


 突然の愛の告白であった。今まで、愛の言葉はなくサーレットさんと愛し合っていた。わたしは顔を真っ赤にして照れるのであった。


「まあ、お子様な反応ですね」


 照れている、わたしにサリアは軽蔑の眼差しをしてくる。サリアはサーレットさんの言葉など気にせずに宝石箱を取り出す。


「このルビーで飾られたオルゴールなどどうです?」


 それは、色の濃いルビーで飾られた高そうなオルゴールであった。


「言ったはずだ、僕はアリータを愛している」

「わたしに恥をかけと申すのですか?」

「あぁ」

「よろしくてよ、わたしは何も無い存在、砂糖菓子と宝石だけが全てですからね。それでもわたしを拒絶するのですか?」


 サーレットさんはうつむいて下を見る。いけない、優しいサーレットさんが迷っている。


 その時である、わたしは地面に倒れ気を失う。それから、気がつくと自室のベッドの上で時間は夕刻であった。


 サーレットさんがわたしのベッドの隣に椅子を置き座っている。


「サーレットさん?」

「気がついたか」

「サリアさんは?」

「帰った、いや、追い出したと言った方が正確だ」

よかった、サーレットさんはわたしを選んでくれた。


 安心すると、また、睡魔を感じる。


「サーレットさん、もう少し、眠りたいの……」

「大丈夫です、このまま、ここに座っている」


 ありがとう……。


 その言葉と共にわたしは眠りに着く。

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