第1話 事実は小説より奇なりとは云うけれど
朧げな意識が段々とはっきりしてきたところで、いまのこの状況がどうなっているのかと混乱しながらも手探りで記憶を辿っていく。
(俺は確か、部室で昼飯を食べていて、それから・・・)
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それは五月も残すところあと一週間くらいになってきた春の日の学校での出来事だった。事の始まりは至って普通だったはずだ。
チャイムがなり終わり昼休みになった教室では、一人の男子生徒が教室を出ようと席を立とうとしていた。そう俺こと
そこに一人、背が高く体格も少しがっちりした男子生徒が近づいてくる。
「おーい、今日は一緒に飯食ってくれんのかーー綾人くん?」
「今日は部室で食べるから無理」
こいつの名前は羽柴《はしば》 智樹《ともき》俺の数少ない友人?のひとりだ。智樹は運動部に所属していて性格も明るい所謂陽キャと呼ばれる奴だ。
いつもはこいつと教室で昼飯を食べているが今日は少し部活関連の用事があって部室で食べることにしていた。
「あーそういえば体育の時そんなこといってたな〜」
「そうそう、だから今日は彼女さんのとこにでも行ってやれば〜?」
俺がそう茶化しながら部室にいく準備をしていると妙に教室が騒めいてきた。
(あれは…転校生か?)
何故そんなに有名かと言うと彼女は7年前ほど前に引退した天才子役と言われた人物だからである。俺は知らなかったが
俺の席は窓側一番後ろ、騒ぎが少し収まってから出ようと思いながら準備を終えて智樹と少し話しながら待っていると騒ぎは俺の教室を通過、する……ことはなく西田歌波は俺達のいる教室にやってきた。たしか彼女のクラスは1組、俺達クラスは5組、1〜4は普通学科5〜8が専門学科で学科が違うので教室棟が違うので違う学科の生徒と言うだけでも珍しいのだが、それが今話題の転校生とは更に珍しい。
扉の前でキョロキョロと辺りを見回していると、近い席に居た女子生徒に話しかけて用件を訪ね始めた。誰かを探しているんだろうがこのクラスに友人でも居るんだろうか?俺はこちらに入って来るなら教室が混む前に出ようと智樹と話を終えて出ようとすると。すると転校生は
「あっいました!」
と言うといきなり俺の方目掛けて歩いて来るではないか、一応後ろに誰か居るのか確認してやっぱり俺の方に向かっていることに気付く。
「あっあの白織綾人さんですよね?ちょっと話があるんですけどお時間ありますか?」
俺が驚いて声も出せずにいると横から智樹が「なんだお前あの転校生と知り合いか?もしかして付き合ってんのかー」とちょっとからかったふうに聞いて来たので「知らねぇよ」と答える事でなんとか意識を取り戻すことが出来た俺は少しどもりながら
「えーと、これからちょっと用事があって、部室に行かなきゃなんだけど、昼もまだだし、、」
とやんわりお断りさせていただいた。とてつもなく嫌な予感を感じたのだ。
「あっそうですよね、、いや、でもあの、じゃあ、お昼ご一緒させてもらってもいいですか!」
教室にざわめきが広がり様々な視線が自分に向かって来るのを感じる。どうやら急を要する話らしい、やっぱり嫌な予感しかしないがとりあえず部室で昼飯を食べながら話を聞こうと
「はぁ、まぁいいですけど」
と言ってしまったのだった。
白雪姫は王子様になれない!! 黯輪ねる。 @curowa_neru
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