白雪姫は王子様になれない!!

黯輪ねる。

プロローグ 林檎の香り

 御伽噺に出てくる毒林檎は甘いのだろうか?苦いのだろうか?食べた人は死んでしまい、味わう時間などないだろう。


 作った奴も当然、食べようとする者はいないだろう。もしかして食べた事がある人はいないのだろうか?


 それでも御伽噺には紅い紅い毒林檎が欠かせない、、、

 


 重い瞼が眠りから覚めようと開こうとする。


 意識がだんだん覚醒していくのと同時に顔のあたりに違和感を感じる。息も少ししづらい気がする。


(んー〜、ここは部室か?)


 身体も何故なのか重く感じる。


(うーん、風邪でも引いたかー?)


(とゆうか、なんで寝てたんだっけ?)


 内心そう思いつつ起き上がろうとするが、やはり金縛りのように身体が動かない。いや、ただ身体が重いのか?


 目だけでも開けようと頑張ってみる、瞼の隙間から入ってくる眩しい光に顔を少ししかめながら目を開けようと瞼に力を入れてみる。


(ここは俺の部室か?)


 うっすらと目を見開くと、そこには知らない女の子の顔があった。彼女は、丁度俺の唇に自分の唇を押し付けているところだった。


 目が覚めたら可愛い女の子の顔が急接近なんてことが過去にあっただろうか?というか、彼女を作った覚えはないはずだ。


 彼女の目は閉じていて、僕が起きたことにはまだ気づいていないようだ。今のこの状況は、朦朧とした僕の意識を覚ますには十分すぎた。


 自分の部屋で見知らぬ少女とキスしているこの状況に困惑して、いったい何が?と真っ白な頭の中で考えていると、彼女の閉じていた目がおもむろにに開いた。


 恥ずかしかったのか、もともと少し赤かった頬がさらに赤くなってきた。そしておもむろに口を開いて、恥じらいのこもった声でこう言ったのだ。



「あ、あ、あの、おお、おはようございます!」



 唇にはまだ彼女の温度が残っていて、そこから仄かに甘い林檎の香りが漂っていた・・・

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