第3話「障害者の存在はタブー?」

 えー、タイトルからして攻めてますね。ゴリゴリですね。


 ここで前置きとして繰り返し述べておきますが、このエッセイはあくまでも「創作における障害者の扱いについて」ということに焦点を当てています。現実にいる様々な障害者一人ひとりを取り上げて……というような面倒くさいことはしません。



 フィクションとして、障害者をどう扱うか。



 そのことを大前提として、念頭に置いて頂ければと存じます。






 ストレートに聞きますが、あなたは自分の作品に障害者を出したいと思いますか? 


 身体でも精神でも重複障害でも構いません。性別も年代も問いません。主人公でも脇役でも結構です。作品のジャンルはなんでもいいし、何人出してもいいし、どんな風にストーリーに絡ませるかだって、あなたの自由です。


 出したくない? そのつもりはない? 考えたこともない?


 結構です。別にいいですよ。出すつもりないなら、無理して出さなくてもいいじゃないですか。学芸会で「役がないから」って理由で、無理やり「木の役」「馬の役」に割り当てるよか、よっぽどマシですよ。




 出したい、出すつもりのある人は……ちょっとタイム! 待った!


 あなたはそういった障害について詳しいですか? 当事者と会って話した経験がありますか? 「面白いな、この人」という理由でキャラクター化しようとしていませんか? だとしたら、アウト!


 詳しくなかろうと、当事者と会ったことなかろうと、書こうと思えば書けます。


 ただし。実際に存在する障害者をモデルにするのは危険です。本気で言います。やめとけ! マジでやめとけ!! 一発でバレるから!!!



 ネットの情報を頼りに一からキャラクターを構成した方が、何倍も安全です。



 さて、ここまで書くと障害者を創作に出すのがいかに面倒で厄介なのか、その片鱗だけでも理解できたかと思われます。


 なぜ、面倒で厄介なのか。


 答えは単純です。「実際にいるから」。




 もうかなり昔の話。とある四コマ漫画でキャラクターが、変な身振りで手話を表現していた(つもり)んですね。作者はギャグのつもりで描いたんでしょうけれど、日常で手話を活用していた自分にとっては、不愉快だった。


 その頃の自分はまだ、小学校低学年だったと思います。


 それなのにその四コマ漫画の表現を、「不愉快」と感じた。それでハガキに実名入りで、作者に抗議したんですね。稚拙な言葉の乱発だったと思いますけど、それはそれとして……。




 実際にいる人、実際にある言葉、実際に根差している文化、実際に広がる世界……


 それを創作という形で表現しようと思ったら、キリがないんですよ。どこまで調べたらいいのか、どんな表現が良くてタブーなのか、こういうストーリーに当てはめても大丈夫なのか、障害を持つキャラの家族構成・背景・歴史・趣味嗜好・何を以って差別、不愉快と感じるか……


 めんどくさいんですよ、本当に。


 仮に障害者を「通行人A」にしたとして、主人公とか脇役とかが「あんな風にはなりたくねぇよなぁ」とか言わせたら、もうアウトです。読んだ人によっては怒り狂いますよ。出版社に抗議しますよ。出版社は平謝りし、「やっぱり障害者を作品に出すのダメだわ」って及び腰になっちゃうんですよ。


 読んだ人の度量の問題? それもありますね。


 ただし。読み手の度量の問題に委ねたら、作者の技量の是非はどうなんでしょうか。差別表現になるのではないか? と足を止めて考えたのでしょうか。「あえて」そういう表現にしたのだとしても、ストーリー上どうしても必要な要素だったのだとしても、読み手が「差別だ」と感じたら終わりなのです。


「そういうキャラを出すな」「こんな表現は不愉快だ」と怒られます。


 双方、嫌な気分になります。


 だったら、最初から書かない方が賢明なんです。そのぐらい障害者を創作で扱うのって、タブーに近い。ノンフィクションならばまだ許されても、フィクションで茶化すような真似をしたら……考えるだに恐ろしいですね。




 自分としては、「書くのは自由だけど、気をつけてね」というスタンスです。


 何に気をつければいいのか? それは自分で考えて下さい……と言いたいところですが。ここまで言っておいて投げっぱなしというのもなんですから、「これだけは最低限、気をつけよう」というテーマでいずれ書いてみます。




 無駄に長くなりましたね。


 ひとまずここで締めくくります。

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