第4話「障害者を作中で描く意義は?」

 待たせたな!!




 ……え、待ってない? はい、そうですか。そうですよね……こんなカッチカチのタイトルで興味を持って読んでくれるかといったら、ね……




 さておき、さっさと本題に入ります。


「障害者を作中で描く意義は?」というのが今回のテーマなんですが、障害者である自分でもこれは難しい問いだと思っています。



「差別はよくない」


「障害よりも、その人を見てあげよう」


「障害を作っているのは社会の方」



 というように障害者を通してなんらかのメッセージを伝える、というのがおそらく一般的(という言葉が適切かはともかく)だと思います。というか、物語そのものが読者に対するメッセージですしね。


 例えば、「障害があっても、関係なく付き合える」というメッセージを伝えられるように描くとする。


 たいへん立派なこころざしなのですが、これは障害者・当事者側であるから言えることなのであって、健常者側がそのメッセージを伝えようとするのはある種の危険を孕んでいます。


 なぜか?


 ハッキリ言ってしまうと、「あなたは障害者じゃない」からです。

 

 健常者であるAさんが障害者であるBさんに対し、「障害があったって関係ない! 僕は君のことが好きだ!」とキッパリ言い切ったとしましょう。Bさんの障害のことなど気にしないといっても、当事者であり、障害者であるBさんの気持ちはAさんとは違います。


 言われた方が気にするんです。


「本当!? 嬉しい!」と喜べるならばたいへん結構なのですが、「本当に……?」とわずかでも疑う気持ちと、疑ってしまうことへの罪悪感を持ってしまう人も……現実にはいるんです。


「耳が聞こえないこと」をテーマのイベントを執った主催者(健常者)が、「お前は障害者じゃないだろうが!」と非難をぶっかけられたケースがあります。


「障害者か、健常者か」というように二分して、物事に結論をつけたがる輩は間違いなくいます。賭けてもいい。




 そういうわけで、障害者を通して何らかのメッセージを伝えたい時は、まず書き手(あなた自身)の立場をはっきりさせておく必要があります。


 障害のある当事者か。


 障害者と交流のある(友人がいる)人か。


 障害者に偏見を持っている(持っていた)人か。


 もしくは仕事などで障害者と関わっているか。


 様々なケースと関係性が考えられます。それに伴って作中でどのようなテーマを扱い、どのようなメッセージを伝えたいかが(おぼろげながらも)決まってきます。


 障害者と社会とのつながりに焦点を当てるのもいいし、「こんな差別を受けるなんておかしい!」と糾弾してもいい。もしくは普通に障害があろうが、のほほんと暮らしている人を描いたっていい。障害者と健常者のカップル、障害者同士のカップルというのも、書きようによってはかなり興味深くかつ、面白くなるものもあります。事前のリサーチは必要になりますが。




 ここで「障害者を作中で描く意義は?」について、個人的な感覚による答えを提示したく存じます。


 自分がもし、もっとディープに障害者について取り扱うならば……「彼らも人間だ」ということを伝えるために書くでしょう。「障害があろうがなかろうが~」という文言は不要。


 自分が障害者であり、当事者であるからこそ書けることがある。だから書く。


 それは障害者に限らず、どんなテーマでも共通するものではないでしょうか。書き手……「あなた自身」の目で見、耳で聞き、体験してきたことを様々な要素と組み合わせて物語を紡いでいるはずです。


 なので……なんというか、個人的に『障害者だけ』テーマとして取り扱うの難しいっていう風潮は理解はできても、どうにも納得できないのですね。そこらへん、昔からずっと変わらない。




 障害者を取り扱うことに、腰が引けている。



 まぁ、仕方ないですよね。





 ……と、そう言って片づけてしまってもいいものか、自分でも揺らいでいます。




 ひとまず、ここで締めくくります。

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