第47話 ブルーアイズWキャット

 旅の再出発、うとうとしながらも、目を開けると机の上に手紙が置いてあった。


『あたいは、一度故郷に帰る。エルナが誘ってくれたのに、申し訳ないけど、あたいはまだ未熟者。師匠が弱いなんて、みっともないし。じゃーね! 隣に置いてある心臓、それが至高の酒であり、あたいの命。預けとくから』


「未熟者って、私もだよ」

「2人でいくしかあるまいな」


 預けられた心臓を、手に取るとうごめいていて、温かい。

 カクテル味のキスをした、あの時から謎であった至高の酒が心臓。コアならば、ガーリン自身は何者であろう。謎が謎を呼ぶ。



「気づいてたでしょ、ラミア」

「妾からどうするか。問うたからな」

「–––なんで」

「気が気でなかった。悪魔といえど、元は人間だ。妾にも情はある」


「そう、ラミアなりのって奴」

「あぁ」


 それでも、一言ぐらい別れの言葉を言わせて欲しかった。



「いこうか、私を待ち受ける試練に。くよくよしてても、しょうがないしね」

「馬車はないぞ、あの娘が乗って行ったからな」


「……次あったら、決闘しなくちゃ。どちらが上か教えてやらないと」


「哀しくはないのか?」

「悲しいけど、永遠の別れじゃない」


 宿を綺麗にして、外に出る。荷物などは亜空間にしまう。そして、数ヶ月ぶりに翼を広げ、ラミアは数千年ぶりに翼を広げた。


 地表を歩くよりも早く、そして馬車で行くよりも早い。あと1ヶ月ほどかかる所、1週間で到着した。


 検問などはなく自由に出入り可能な場所。四方制海の一つラバフロー。ここは海に住む者たちの統治国家でもある。陸に関しての法は若干緩く、海に関しての法は厳しいそんな場所。


「ついたけど、試練について何も聞いてないな」



[つきました? お答えしましょう。試練はこの国の神殿で行いまーす!]


「神殿か。この世界の神はバッカスだっけ」


[海の神殿ですよ? バッカス様なわけなくないですか?]

「じゃあ。誰よ」

[エノシガイオス様、知らない? 教養がないんですね!]


「こいつ、ガーリンか?」

「独り言は体外にして、早う休みたいのじゃが」

「はいはい」


 町並みは白い住宅が並び、綺麗な水が流れる用水路が海につながっている。


 傾斜がキツく、階段を下りながらどこか休める場所を探していた。すると、家の角から猫が飛び出して私を見つめた。私はその猫を知っている。そっくりどころの話ではない。死ぬ前に飼っていたハクだ。



【ブルーアイズW《ホワイト》キャット】愛称ハク


 八分休符を逆にした折れ尻尾、まん丸顔、運動させようとしても運動せず太ったお腹、特徴的なシャムトラの蒼瞳


 私は触りに行った。甘えん坊だったあの猫は、すぐに近寄って喉を鳴らす。ご飯の時には鳴いてアピールする。可愛いかった。


 にゃーん、と言いながら、ハクに似た猫も近づいてきた。喜びで涙を猫で拭った。


 毛柄も一緒だ。双方共に元の世界にはおらず、死んでいる。猫も転生する時代なのかもしれない。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

酒豪勇者〜まだ見ぬ酒を求めて〜 文月紅凛 @kiharaRIN

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ