第46話 さようなら、そしてまた会おう。愛しき人

 殺人を犯し、私は人ではなくなった。この国の法で裁かれるべき、化物だ。

 しゃがみ込むしかなく、血生臭い台所で、何回も何度もこの光景をみて、吐いて、クリスタを抱きしめて、涙を垂らしながら、声を枯らす。


「クリスタ……、クリスタァァァーー!!!」


 私はバラバラになったクリスタを、一欠片も残さず集め、火葬する。その前に頬を撫でたり、頭を撫でたり、可愛い耳を撫でたり、そしてほっぺにキスをした。周りに咲いていた花を飾り付けて、着飾った。


 骨壷の代わりに薬瓶を、洗い拭きあげて、骨をいれる。

 この国の葬り方ではないが、これしか分からない。土葬ではないのは、置いていっている気がして、ならなかったから。


「今まで、ありがとう……、そして、ごめんなさい。守れなくて……」


 それでも、クリスタは、エルナは悪くないと言ってくれるのかな。私のせいなのに…… 冒険に連れてきた私のせい。


「それにしても、アイツはいつまで寝てるんだ」


 ガーリンは未だにベッドで寝ており、スヤスヤである。


「私も寝てて助けられなかったし……、人のことは言えない」

 私は、ガーリンが起きてから、どう説明しようか悩んでいた。正直に話すべきか、嘘を貫くか、


 朝、ガーリンは日の出を前に起きる。

 隣にエルナが寝ていた。


「やっぱり、赤ちゃんじゃない!」

「おはよう、ガーリン」


 勘が鋭いのか、ガーリンはクリスタが居ないことに、既に気づいていた。


「あれ? クリスタは?」

「クリスタは、ここに居る」


 そういい、私は壺を取り出した。正直に話した方がお互いにいいと思ったから。


「はっ!? ど、ど、ど、どういう?」

「禁酒公がいてね……、そいつらに、殺されてた」

「えっ、」

「ガーリン、本当は助けに来て欲しかったけど、だけれど、思った。クリスタも助けを望んでいた。私も寝ていた。だから、無意味だとも」


「エルナ、骨壷を持って、立ってくれない?」

「うん」


 

 ガーリンは、土下座をし、腕だけを伸ばし、謝った。その姿は惨めだとも、捉えられる。


「謝って欲しいわけでは、なかったんだけど」

「あたいの、あたいが」


「後悔しないで、後退りはしないで、それはもう、私がしたから」


「それでも、あたいが」

 双方共に不甲斐なさを痛感する。これから、喧嘩を仲裁してくれるのは、誰だ。美味しい料理を作ってくれるのは、誰だ。失った者は途轍もなく大きい。たとえ、戦闘は出来なくても、大事な仲間。


「今日は休もう、宿はめちゃくちゃだから、片付けないとだし」


 自身を責める。似たもの同士といえよう。心身ともに疲弊しているので、明日、出発する。


 深夜、全員で寝ていると、ラミアがガーリンに向け、こんな事を言い出した。



「これから、死にゆく定めかもしれぬ、妾は契りゆえ、エルナについていく。其方はどうするか?」





「あたいは、一度、故郷に戻る」






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