第33話 ふぉーるん、えんじぇる

 黄昏が近づき、晩酌をしようと、至高の酒【天酒】【けものみち】をとりだし皆に振舞った。冒険者2人は驚きの声を上げながらも、嬉しそうにお酒を飲んだ。やはり、酒豪の導きを持っていないので、身体に変化はない。


「美味しいです。他種族のお酒を飲む機会に巡り合うなんて」

「けものみち、久しぶりに飲んだにゃ」

「もう一つ、至高の酒があるんだけど」

「嫌よ‼︎ あれは特別に飲ませてあげたんだから! 誰でもいいって訳じゃないんだから‼︎」

「いいにゃ、天酒の方が出会うの珍しいから、これが飲めただけで満足にゃ」

「チッ、ガーリンを辱めようと思ったのに」

「このゲス勇者! キモい! 死ね!」

「あ? 私を散々恥かしめといて、何を今更」

「こら、喧嘩しない!エルナもガーリン様も悪口言っちゃいけません!」

「はーい」

「しょうがないわね、今日だけ許してあげる」


「ふふ、仲がよろしいんですね」

「まぁ、一応、助けて貰った身だし、信頼はしてる」

「素直に好きって私に言えばいいのに」

「うっさい!あんな時、キスで飲ませるんじゃなかった」


 刻々、楽しい時間は過ぎる。城壁が見え始め、遂にファザーへ到着した。門兵は小さな妖精。これで門兵が務まるのかは、分からないが、仕事はしっかり行っている。ガーリンの身分証と国交証を見せた。冒険者二人はギルドから発行される手帳を見せて、門を通過した。道路を進むと、膝から崩れ落ちている者と、雄たけびを上げて喜ぶ者がいた。中には文様が体に入っている変わった者も、あれが特定奴隷であろうか。


「私たちはここでおります」

 ギルドの近くに止まり、二人とは、ここでお別れである。また、出会えるよっと言葉を残して。


「いい方たちでしたね!」

「でも、あの皇女はダメな奴の臭いがする」

「ダメな奴の臭い? あ、シーガーの匂いでしょうか。あの臭いは好き嫌いありますから、仕方ありませんね」


 道中、皇女はたばこの様な物を吸っていたが、そう言う事ではないと心で思っていた。

 そろそろ、王宮に着く中頃、外を眺めていたエルナは、ある人物に目を凝らして見ていた。黒い翼に白い短髪……“アリス”に酷似している。思わず、名前を叫び馬車から飛び降りて、確かめる様に後を追った。



「アリス!?」

 街中に消えていったアリスを追い、馬車は走り去った。

「エルナッ!? どこへ!?」

「先、王宮行ってて‼︎」


 歓楽街を通り、人混みを避け、アリスは裏路地へ消えて行った。

 私もその裏路地へ入ると、アリスはつけてきたのを、分かっていたかの様に、そこで待っていた。


「久しぶりだね、エルナ」


 私は足早に近づき、抱きついた。私はいつも、泣いてばかりだ……

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