第34話 親友のモクテル
夢じゃ無い、確かに感触があるし、そこにいる。温かいし、ぷにぷにしている。
「くすぐったいよ、エルナ」
「だって、私を守って、私、わたし……」
「落ち着いて、大丈夫だから、僕は逃げたりしないから」
「ありがとう……、私を守ってくれて……」
「大丈夫、僕がそうしたいから、そうしただけ、僕もエルナが生きててくれて、嬉しい」
瞳の雨は晴れに変わり、鳥の囀り程の声迄に、枯れていた。落ち着きを取り戻したエルナは、アリスの手を取った。
「ねぇ、今から一緒に、王宮へ行かない?」
「王宮? いいけど、何をしに行くの?」
「至高の酒を貰いに! 私、勇者になったんだ。だから、アリスも仲間になって欲しいって思って」
「勇者か、わかった。行こう」
恋人繋ぎをしながら、王宮を目指した。徒歩20分
門番に事情を説明し、中庭に入った。警備隊とおもしき兵士が私たちを案内してくれて、城の扉を開ける。王宮の間の扉は今回は小さかった。私は中に進められるまま入り、前にはクリスタは跪き、ガーリンは堂々と立っていた。王に首を下げていたのは、やはりクリスタのみで、私たちも、整列し同じ様に王に敬意を表す。
「よく来た勇者一行。朕こそが、第136代ファザー国大王、ジャンディ・ガオ・ウルウである」
そう名乗った。大妖精であるため、他の妖精と比べれば、子供ぐらいであろうとも、それは巨人並みである。
「久しいな、ガーリン。エルフは見た目が変わらんから、安心するな」
「妖精もでしょ、エルフよりは長生きしないけど」
「相変わらず、小さいのに態度はデカいな」
「私の話はいいから、手紙に書いてあった通りに至高の酒もってきてよ」
「―――それがだな……ガーリン、至高の酒を無くしたのだ」
その言葉を聞いて、呆れ顔をしたのは言うまでもなく、そして王は勇者を見なくなった。
アリスの方から小言が聞こえた時、月の動きよりも速く走り出し王の首を地面へ切り落とした。兵士はワンテンポ遅れ王の首を持ち、女を押さえ込んで、勇者らも捕らえた。言い逃れもできない。まさか、アリスが王を……
「アリス……何してるの……?」
「ごめんね……私……アリスじゃないの」
顔が見るも無残に変わり始め、終えた姿は角の生えた悪魔、丸眼鏡で知的そうな雰囲気に合わずハルバードを片手に持っていた。抑え込んでいた兵士と血を薙ぎ払い、クリスタに別れを告げた。
「さよなら、お馬鹿な天使さん」
「なんで、こうなるんだよ……」
悪魔の言葉は聞こえずただただ、運命を恨んでいる。その後悪魔は姿を眩ませ逃げて行った。私たちは、兵士になされるがまま、牢屋に入れられた。兵士に必死に誤解を解こうとしたが、結果は空しかった。
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