第29話 旅路、その先に

 そして、1人の男性がコソコソと話を始めた。それは、もう一つの恐れていた出来事。獣人族を嫌うエルフがクリスタの種族に気がついたのだろう。帽子を深々と被っていても、気付かれる。だって、尻尾を隠していないのだから。


「なぁ、あの帽子を被った子、尻尾ついてないか?」

「ん? あぁ、ふわふわしてんな。獣人族か」

「まだ、獣人反権派がいるのに、よくこれたな」

「なんだか、聞いたとこによると、勇者の仲間らしいぜ。耳隠してるけど、バレバレだよな」

「だな、今は、魔女様の死を哀しむとしよう」


 葬儀が終わり墓に残る者、帰る者そして、獣人であるクリスタに野次を飛ばす者


「こっから、立ち去れよ。下等種が」

「やめぬか、貴様ら」

「魔女の従姉妹ってだけで、偉そうに。俺らはそこの獣人に話があんだよ」

 いつもこうだ、めんどくさい事件が起こる。

「クリスタが君たちに怪我でもさせたかな」


「ちげぇよ、獣人はな、勇者にエルフを従属と見なすよう進言した奴らだ。そのせいで、幾千年前、魔女と勇者が戦った。それに同乗した獣人も加勢した。俺の先祖はその戦いに巻き込まれたんだ」


 表情を暗くして、落ち込んでいるのが、よく分かる。


「勇者は私だ。生まれ変わりだけど。恨むなら勇者である私だけにしといてくれ」


「はぁ? こんなチビが勇者? 先代勇者と比べたら、大層弱々しいな」

「そうだな、魔女様を救えなかった愚かな勇者ですよ。行こう、クリスタ構ってるだけ、時間の無駄」


「はい、」


 去っていこうとする私達に罵詈雑言を、浴びせる。無視をするしかないが、気分が悪くなる。


「大丈夫、ごめんね。私のせいで」

「うん、大丈夫。前々から言ってくれてたしね」

 愛想笑いをする。


「そうだ、お買い物いかない? ガーリンさんもご一緒にどうですか?」

「え? 私? まぁ、エルナがいくなら」

「気分転換にか、いいよ! いこ!」

「次の国へ行く前に、準備も必要ですからね!」

「そうか、エルナも、もう行っちゃうのか」

「寂しいの? 一緒に冒険する?」

「いいの?」

「師匠と旅ってのも、面白いかなって、まだまだ私に魔法を教えてよ」

「うん! もちろんよ! 未熟者だからね!」


 暗雲から光が差し込んだ笑顔に、私は戦ってよかったと思えた。

 そして、買い物はシルフィーユ泉の近郊で、前魔女様が統治していたここでなら、獣人を嫌う反権派はいないので、安心してほしいものが買える。ガーリンも明るい笑顔が戻ってきたし、いい思い出ができた。その道柄、ガーリンが話しかけてきた。


「ねぇねぇ、次の国どこか決まってるの?」

「特には、ないかな。お酒手渡してくれるところがいいけど」

「ふふん、そうだと思って、私が手紙を書いて送っときました。ママの訃報ふほうと共にだけど」

「で、それは、どこの国なの?」

「妖精の国ファザーよ! 通称賭博の国。楽しそうじゃない?」

「ガーリンが行きたいだけじゃん」

「いいじゃない。私この国から出たことないし、あっちにいる友達にも会ってみたいし」

「そうか、なら、目的地はファザーで、クリスタもいい?」

「構いませんよ! 私も旅ができるだけでうれしいので!」


 


 

 旅はまだまだ長いのだろう。ずっとこの三人か、はたまた増えるのか。そういえば、私のパーティー魔法使いばかりだ。剣士の仲間も欲しいな。先に剣士の仲間を探すか。



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