第27話 そう、首の皮一枚繋がったってわけ

 転がる生首を、掴みエルナは、終わりじゃないんだろと、独り言を呟いた。


「なんで、分かったの? 死んだと思うでしょ、普通」


 持っていた生首がしゃべり始め、そして溶け始めて、体へくっつき頭部が再生した。にやにやと馬鹿を見る目で見つめてくる。


「スライムか、てめぇわ」

「おしいね、僕はホムンクルス、人間とスライムの混合種。第三人類だよ」

「どうでもいいよ、もう一回殺される準備はできたかな」

「お酒も見つかってるし、いいよ何回でも殺されても」

 とはいえ、魔力は極大魔法一発分、しかも、ガーリンの唾液を飲んでから、やけに興奮してる気もする。判断の前に煩悩が邪魔をしてくる。頭が痛い。至高の酒を飲んでも届きはしない。でも、楽しい気がしてきた。あぁ、いい。気持ちいい。

 もういい加減でいいや。


「インフェルノッ、インフェルノッ! インフェルノッ!!」

 三回、同じ魔法をミクストに食らわせるが、それでもなお、直立不動。


「芸、少なすぎない?」

「うるっさいなぁ、今、さいっっっっっっこうにいい気分なんだよ!!」

「エルナの魔力が、目にみえるぐらい、どんどん増えてる……」

 またも、エルナは、身体能力をあげ、ミクストの首めがけて襲い掛かる。何回でも来いと言わんばかりに待ち受けるミクストは、首を取られても、再生し、またとられを繰り返し次第には、手足を捥がれ横たわったまま次々に食いちぎられていった。そこにインフェルノを唱え、消し炭となった。疲れ切って倒れこみそうな体を維持で支える。


「はぁ、まじぃ、ぺっ」

「不味いなんて、失礼じゃない?」

「まだ、生きてんのかよ……」

「僕にも、色んな僕がいてね」

「ふざけんなy――」

 気張っていた体は最後には、倒れこんでしまった。無防備にも、とどめをさそうと、近寄ってくる。


「このまま、死んでもらっては、困るな」

 この声だけは、遠のく声とは別にはっきり聞こえた。


 次の番、ラミアが出現した。

「妾と戦うがよいか、逃げるがよいか、選べ。」


 ラミアを見て、冷や汗をかいて、苦虫を嚙み潰したような顔を見せる。それは、たとえ彼でさえ、勝てる相手ではないからだ。


「これは、これは、淵源人ラミア様、そうですね、負ける戦いはしないので、逃げさせていただきます。それでは、」

 しっぽ巻いてとっととテレポートアイテムを使い逃げて行った。


「おもしろくない、久しぶりに戦えるとおもっておったんじゃがな」

「ラミア様、ガーリンの血が止まらないです。助けてください……!」

「みせてみよ、」

 回復魔法を腹部に当てると、血は止まり、苦しそうな顔から安らかな顔に。

「これでよい、安静にしとれば、起き上がる。妾は、エルナを起こす」

「感謝します。ラミア様」


 黙ったまま後ろ姿で、手を軽く振り、エルナに近づき、手のひらサイズの水玉を顔に浴びせる。すると、うっすら目を開いた。

「あれ、ラミア、皆は、無事?」

「大丈夫じゃ、何度も言うが、淵源人に喧嘩を売る馬鹿はおらんからな」

 私、一人じゃ、やっぱり何もできないんだ。でも、そう、首の皮一枚繋がったってわけか。助かってよかった。

 戦う勇気は付いたかな……

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