第22話 勝利。そして教えを乞われる

 想像以上の、炎に視界を妨げられたエルナは、ガーリンを見失ってしまう。まさか、焼かれて死んではいないだろうかとも思うが、先程まで優勢だった者がこんな物で死ぬはずも、ないだろうとも思っていた。

 そんな矢先、炎から現れたのは、無傷のガーリンだった。

「効くと思ったぁ?」

 笑顔で、私の顔を片手で掴み地面へ叩き込んできた。私は負けを悟った。気が遠くなるくらいに、猛烈に頭を打ち、こっちが死を感じさせられた。ガーリンは馬乗りになって、エルナの顔を殴り始めようとした。



「そこまでじゃ、ガーリン」

「ッ‼︎ 邪魔しないでよ。ママ……私は約束通りにして、やろうとしてるのに」

「約束を守るのはいい事だけど、恨みを晴らす決闘をするのは、また今度にしておいてくれ」

「はーい、ママ」


 魔女は、エルナに対して回復の魔法を使用し、起こさせる。

「エルナ殿起きよ」

「ぅ……はぁあ!」

「其方の負けじゃ」

「勇者様、ざっこ!」

「そういうでない。ガーリン」

「はーい」

「エルナ殿の強さ。よくわかった。死ぬほど弱いということがな。至高の酒を預けるには、まだ心配である。」

「それは、そうでしょうね。自分でも分かってましたから」

「ふむ。そこで、魔法をより一層深めるために、ガーリンを師として、学んでみてはいかがかな?」

「は? あ、いえ失礼しました」


 ちょっと前まで煽りあって負けたのに。だけど、強者なのは確かなので、学んで損は無いだろうと、覚悟を決めた。



「其方の気持ちも、分かるが、強くなければ信頼はできんからな。ガーリン頼んだぞ」

「もちろんだよ。ママ。このざこ勇者をつよつよに仕立ててあげる!」

「よろしくお願いします」

 立ち上がり、下げたくもない頭を下げて教えを乞う。


「ふふん! いい姿勢ね!」

 このク◯ガキ、次決闘する時、アホずら欠かせやる。と息まきながら、平常を保った。

「それでは、皆の元へ帰るとするかね」


 指を再び鳴らして、風景は城の中へと戻ってきた。そこで待っていた、クリスタとカナリアが、大丈夫かと、心配してくれた。あれ、そういえば、ラミアは何処に……?


「大丈夫? エルナ、どこも怪我してない?」

「ご無事でしたか、勇者殿。」

「平気、大丈夫だよ。勝負には負けたけど」


 あはは、と愛想笑いをしていると、クリスタが、大きな怪我しなくてよかったと、言葉を溢した。


「そこのウサギの獣人よ。エルナ殿は、ここで魔法を学ぶ事になったが、其方は、どうする? 客人としてもてなすが。それとも、一緒に魔法を学ぶか?」


「客人として、お願い致します!」

「よかろう。今日はここまでとしようか。ガーリン、カナリア、案内は頼んだぞ」

「はい、魔女様」

「はーい」


 魔女に挨拶を済ませた後、私に着いてこいと言わんばかりに、手を振るガーリン。可愛いとこもあるよな。


「そういえば、さっきからラミアの姿が、見当たらない」

「馬車を降りた時は、いたと思うんですけど」


 不思議そうに考えていると何処からか、ラミアの声がする。

「妾は、今其方の魂におるぞ。悪魔なのだから当然であろう?」


 脳内に直接声がする。ちょっと、きしょいが確かに悪魔って取り憑いてるもんだしなと理解した。


 そうもこうも、している間に客室へと着いたらしい。エルフの部屋はどんな感じなのだろうとウキウキし始めた。

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