第21話 エルフの幼女は手加減なし。

 エルフの城に到着し、馬車をおりる。カナリアへ案内されるがまま、魔女と魔導士がいる魔法師謁見の間なる所についていく。


「こちらです」

 どの国もお偉い方に会う時は大きな扉がある。

 そして、その先には、両脇に階段があり、その高みにいたのが、魔女と魔導士と思われる男女がいた。

 エルナ一同前へ歩き、跪く。


「ようこそ、エルフの森へ。勇者エルナ殿。ウチの名はシャルラン・カフ・マーベリー。全てはクロンダイク皇子ブルー・ドッグから聞いてある」


 赤髪のとんがり帽子を被った妖艶な魔女が脚を組みこちらを見下ろしていた。その隣に沈黙を決めている白髪のダークエルフ魔導士がいる。


「魔女様、魔導士様。お元気そうで何よりです。」

「カナリア、久しいな。従姉妹だというのに全く顔を見せないから、心配しておったぞ」


「ご心配、感極まる所存です」

「そうか、それで君が、酒豪勇者殿で間違いないかな」

「私が酒豪勇者を任されました。エルナ・リシュブールです」


 私の苗字の部分となる【リシュブール】を聞いた時魔道士の耳が小さく動いた気がした。あれでも起きているのだろうか。しかし、魔女様は


「エルナ殿か。いい名だな。して、要件はこの酒杯こと至高の酒であろう?」


「はい、その通りでございます」

「くれてやってもいいのだがな。貴殿がどれ程の強さか見てみたい」

「と、いいますと……」

「ウチの娘、ガーリンと決闘をしてみてくれぬか?」


 さっきカナリアさんが話してくれた。エルフ族は、決闘で優劣をつけると。


「仰せのままに」

「よし、ガーリンこちらへ。」

「はいはーい!よろしくね!勇者様っ!」


 柱の陰から飛び出してきたのは、腰ほどの白髪で幼子に近く、露出面の多いダークエルフであった。


「なんて、破廉恥な……」

「これが普通だよ? それより、決闘しよ?」

「あ、そうなんだ」

なんの知識もないエルナは、偏見はしないよう。信じるほかない。


「ここに、決闘が相成った。邪魔が入らぬよう」


 魔女が指を鳴らすと、城の中が順々と草原へと変わっていった。風にそよぐ草の中で対峙し、青空が彼女らを包み込んでいた。


「それでは、距離をとり構え」


 双方、50mほど離れエルナは杖を、ガーリンはステッキを構えた。魔女はどこかへ消えてしまった。


「決闘!!」

「エルフレイム」

 最初の瞬間から、ガーリンの優勢は決まっていた。彼女の魔法は強力で巧みに繰り出される魔法は、光と音のショーのようで。エルナは必死に応戦し、魔法を最大限に引き出すために全力を尽くしたが、ガーリンの経験と知識が圧倒的だった。


「我が……あっぶ!!」

 呪文を唱える暇さえ与えない素早い攻撃。それを見てけらけら笑うガーリンを見て腹が立ってくるが、今は耐えるしかない。


「勇者様よっわ!」

「今その口塞いでやるわ!」

「やってみなぁ! 出来たらだけど!」


 エルナは無詠唱に切り変えるが、出来損ないの魔法を打つまでの猶予すら、与えてくれない。


「おっそ~~い。いつ魔法出てくるの?」

 言い返す言葉もない。だが、一つ思い出したことがあった。そう異様にアルコール臭かった時を。もしやと思いガーリンを挑発し作戦を開始した。


「でも、当たんなきゃ意味ないし、そんなもんですか。魔女様の娘は」

「あッ? 小賢しいだけでしょ? 避けてばっかで、なっさけな〜い。」

「じゃ、当ててみろよー!」


「よっわよわだから、手加減してあげてるの。それとも至近距離で、戦ってほしいのかなぁ?」

「至近距離でも、あたんないよー!」


「いいわ。顔面が、ヘドロみたくなっても、知らないから」


 ガーリンは途端にステッキを放棄する。一瞬目をステッキの方に目を送らせると、咆哮と共にガーリンは、半獣人化を終えていた。鋭利な長い爪に、もふもふな手足。頭から新たな耳を生やした姿だった。


「こいよ。子猫ちゃんッ……‼︎」

「ッ!!」

 緊張ともになる鼓動。確信などはなく、ただテレビで見たことがあったから、出来るんじゃないかって、考えただけ。


 素早く距離を詰められる。直往邁進ちょくおうまいしんに。私は、小さく息を吐き大きく吸い、それと同時に口元近くに指を立てる。今まで散々練習してきた魔力調整をしてきたように、指先に炎を灯らせて、勢いよく息を吐きだす。吐き出された息は炎を纏い立ち向かってくるガーリンを熱く包み込んだ。

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