第20話 眠れる天使の追憶とエルフの森
私は不思議な空間にいた。暗いのに一差しの光が私を照らして、まるでスポットライトに当たる女優。
「どこ……」
歩き始めるとそれに沿うように光も私を追って来た。
「止まって……」
どこからか、言葉が聞こえる。鮮明に。
「誰?」
「ぼくは貴女の片割れ…そして昔、身近にいた貴女の友達」
「友達……もしかしてアリス?」
「そう、」
スポットライトがもう一つ照らした先には、私を奴から守ってくれた。この世界で初めての友アリス。
「無事だったんだ。よかった」
「エルナも無事でよかった」
膝から崩れ落ちたエルナに駆け寄った。そんなアリスをみて。
「アリス……今どこにいるの?」
「今は……そう、旅をしてる。至高の酒を求めて」
「どうして?」
「それは……いつかわかるから……」
「そう、アリス……私、嬉しい」
「ぼくもだよ。エルナ」
「私ね。生きててほしいと思ってて。ずっと悔やんでた。あの時逃げた事」
「いいんだよ。守りたくて、君だけでも逃げてほしいって、ぼくがそうしたんだから」
「会いにいくから、絶対」
「待ってる」
笑顔で見送るように去っていくアリスを追いかけるが、そこでクリスタに起こされる。
「エルナ起きて、朝だよ」
「う、眩しい」
シンプルに描かれた、布に日が差し込みカーテンを開けると、この村の、のどかな園庭が広がっていた。
「おはよう、みんな待ってるよ」
「おはよう……なんだか、大切な夢を見たよ」
大きく欠伸をした時、異様にアルコール臭かったのだ。だけど、そこまで気にしてはいなく。身支度を始める
「それは、よかった!」
エルナは背伸びをして、荷物を持ち階段を下る。宿の鍵を返してお礼をいい、馬車へ乗り込む。
「おはようございます。エルナ様」
「おはよう。カナリアさん」
「お寝坊してるかと思いましてよ」
「ラミア、性格まだそれなのか」
「一度変わってしまうと、余り変わりませんことよ。覚えておきなさい!」
「皆さんお待たせしました! では、早速いきましょう!」
全員、馬車へ乗った事を確認して、馬車を走らせる。とはいえ、もうエルフの森は目と鼻の先である。深く木々が高い森へ突入した。じばらく行くと、大きく凹んだ窪みに段々畑の様に街が形成されていた。中央には美しい泉が広がっている。
「景色いいですね!」
「我々、エルフの中央街です。真ん中にある泉はシルフィーユ泉ですね。エルフ達のお清めの場所です」
「隕石でも、落ちたかの様にへこんでる…」
「ここは、元々勇者と初代エルフの魔女が戦った跡地ですので、戦いの激しさがわかるいい場所です」
「そんなに、強かったのか…私も強くなれるかな。」
カナリアの故郷の知識を聞きながら、目的地へ向かう。エルフの森を治めているのは、魔女と魔導士と呼ばれる魔法に長けた者達が治めている。その魔女と魔導士のいる城に向かう。すると、巨大樹が城を飲み込んだかの様な、謎の建物に着いた。いや、遠近法で城が飲み込まれている様に見えるだけかもしれないが。
「そこの馬車こちらへ」
門番達に誘導されるがままに、ついてゆく。馬車が止まると門番達は尋問を始めた。この世界で2度目の門番達。お疲れ様です。
「今日は何用でございましょう」
「後ろのエルフの方に聞いてください。何分久しぶりに会いたがっていましたから」
馬車を引いていた老人がそう言葉を溢すと、中からカナリアが出てきた。
「酒豪勇者様を連れてきたから、魔女様並びに魔導士様に謁見を申し込みたい。」
話を遮って門番は話し始めた。
「カナリアじゃねぇか! 久しぶりだな! おい!」
「久しぶり、シルフィーユも元気そうで何より」
「魔女様方と謁見だったっけ。いいぜ。お前は信頼できる奴だからな。まッ一応見張はつけるけどな!」
「ありがとう。門番頑張れよ」
握手を交わしていざ、魔女様、魔導士様の元へ。
優しければいいなとそう願った。
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