第19話 宝石の味わい
「そうです! こんな可愛いエルナがニケのはずありません‼︎」
「そうですわね。何万年も生きた妾が思うに彼女は泣き虫で弱い赤子の様な小娘じゃ」
クリスタ、私はニケだと間違われた事忘れてないからね。でも、そうやって守ってくれたことも忘れない。みんなが庇ってくれている。私もいい加減慣れないと。それとラミア覚えとけよ。
「村人のみなさん。お気持ちはわかりますが、どうか落ち着いてください。ここを戦場にしに来た訳ではありません。他人の空似ですから」
村人達から畏怖の感情が和らいだ時、1人の男が喋り始めた。
「すまねぇな、嬢ちゃん。何分客人が来るのが珍しくてよぉ、少し緊張してたわ」
その男は後に村長だと名乗り、エルナ達を宿へ案内して食事を振る舞う。
「狭い宿で勘弁してくれや。それと、部屋2人分しかねぇから分けて使ってくれ。ほい、鍵」
「ありがとうございます」
クリスタが袋から金貨を取り出そうとすると。
「お代はいいよ。失礼な事しちまったしな」
話せば分かり合える。誤解なんだと。
村長は宿を後にして、エルナ達は昼食を食べて部屋決めをする。
「エルナとクリスタ、カナリアとラミアがやっぱりいいと思う。」
先行して決めて皆が納得する分け方をした。
「私は構わない」
「妾も」
「それが1番安全か」
「では早速、荷物置きに行きましょうか」
それぞれ鍵を手に取り、手荷物を握り、急な階段を上り部屋へ運ぶ。
内装は豪華ではないにしろ、泊まるには十分な物は揃っている。
「あと森まで、何日かなぁ」
「もう、目と鼻の先ですから、明日には着くと思います」
「なんか、謎に緊張してきた。気位が高いんでしょ」
「そうですね。エルフの皆さんは自分こそがって人が多い印象です」
「私、偉そうにしてるやつが苦手なんだよね」
「大丈夫ですよ。多分ですが……」
私に残業を押し付けてきた上司を思い出さられるからだ。これも全く持って嫌な記憶。
ラミア、カナリア、クリスタ、エルナ四人は夜まで自由に過ごした。自由時間中、ラミアに話し方と一人称が変わった理由を尋ねてみたが、
「あああああああああ、気狂いしそう」
枕に顔を沈め思い悩んでいた。
「しっかりしてください。エルナ」
「わかってるけど、ああああああ」
「それ程までに嫌なんですね……」
「うん」
「しょうがないですね。色々ありましたし」
クリスタはエルナの横に寝そべるが、エルナはそっぽを向く。
「エルナ、一回だけしか言わないからよく聞いてね。【好き】」
エルナを抱きしめる。突然の事に悶えるがエルナも答えるように、姿勢を変えて抱きしめる。
「今日はこのまま寝ましょうか」
「うん、私も、好きだから」
次はクリスタの胸に顔を埋める。なんだか懐かしい香りがする。晶と一夜を過ごしたあの時と同じ匂いが。
私は静かに、懐かしさに浸っていた。そして眠りに落ちていた。
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