第18話 それは綺麗な森林の手前。
悪魔ラミアが懐から取り出したのは、試験管で、中には青色の液体が入っている。コルクの蓋を開けて口元へ運び飲み始める。空になった試験管はまた懐にしまう。
「ふぅ。迷惑をかけたな」
「もう、襲ったりは」
「しねぇーよ」
「ラミア様は、どうしてこんな所に?」
「あ?ただの昼寝だよ。やることねぇーからな」
「すみません。お昼寝の邪魔をして」
「いいよ。それより、お前……ちび」
身長から考えやはり私だろうか。身長一緒ぐらいなのにチビとは、いささか……
「なに? 私、殺されるの嫌だから」
「いつまで根に持ってんだよぉ。堕天するぞ。そんな事よりオレをいや、…………妾を旅に連れていけ」
何故か少し間が空いて一人称が変わったが、気にする事なく話を進めた。そういうお年頃だと思って流したのもある。
「は? 今先ほど殺そうとしてた奴を、易々と仲間にするとでも?」
「そういうと思ってな」
ラミアは爪を尖らせ手首を切って自傷に走る。滴る血をエルナに差し出して。
「飲め」
「ぐツツツろいわ! 何だよ。急に……」
「妾と契約せい。この血を飲めば誓ってお主を攻撃せん」
「えぇ。胡散臭い」
「さっさと飲め‼︎」
「わかったよ……」
手首に口をあて血を啜る。鉄の香りが漂い、微かな塩気と共に口いっぱいに、独特の味わいが広がった。その深みには、悪魔ラミアが経験した、何十何百何億とある苦心が感じられる。
周りの目は外道を見るかの如く辛辣であった。
「初めて他人の血を飲んだけど、美味しくはないね」
「美味しいって、答える頭のおかしい奴は、そうそうおらん」
「本当に襲わない?」
「はぁ。試してもいいんじゃけどな。何分苦しいから嫌なんじゃ」
「さっき、襲って来た分謝られてない」
「しょうがない小娘よな。」
ラミアが爪をたててエルナに突き刺そうとするが途中でもがき苦しみ始めた。本当そうで、エルナは渋々旅の仲間として受け入れた。
「では、行きましょうか。エルフ族は時間に厳しいですから」
ラミアを仲間に迎え入れ再びエルフの森に向かう。
日が落ち…そして、昇り、また向かい。野宿にもなれた五日間、食料が尽きそうになり、近くの村へ寄った。
そこは、エルフと獣人の混血「
「今日はこの村で、一晩過ごしましょう」
「はい」
「久々のベッドよく眠れそうですわ」
「降りましょうか」
一同馬車お降りる。まずはカナリア、次にクリスタ、そしてラミア、最後にエルナが。その容姿を見た
その足跡は、この村に儚く刻まれる。畏敬の念と恐怖が村人たちの胸を締め付けられた。エルナは、掘り返された思い出で頭を抱える。
「失礼だと、思わないか!」
最初に言葉を発したのは、意外にもカナリア。
クリスタは私を慰め、悪魔ラミアは村人側に回っていたが、無視されていた。
「この方は決して勝利の鳥ニケではない。しかと見よ。その姿を目を!! 紅くはないであろうが!! こちらこそ、勇者エルナ様である‼︎」
エルナは、村人の方を向く。疑念がうねり曖昧な視線がこちらを刺してくるが、翠眼を見た瞬間村人たちは、まるで森の奥深くに眠る泉を、発見したかの如くかっぴらく。
勝利の鳥を象徴する紅色の目ではなく、清らかな透き通った
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます