第11話 聖都クロンダイク
馬車に揺られ、野営をしながら聖都へ向かう。3日の月日が経った。目の前に万里の長城を思わせる長い壁が続いており、向かうそこに正門がある。
門番が、こちらに気付き、近寄ってくる。
「無事にご帰還何よりです。シュレッド団長」
「ああ、無事に勇者も連れてこられたよ。キルシュタイン」
「門を開放しろ。団長のご帰還だ」
その声と共に門が開いていく。重い音をたてながら。
遂に、聖都クロンダイクに到着する。
「それでこれから、どうすればいいの?」
「聖皇子より、資金と任務が与えられます。」
「任務って?」
「確かではございませんが、至高の酒が奪われていない、エルフの森へ遣わされるでしょうな」
エルフ…聞いた事があるような、ないような。
まだ少しながら馬車に揺られる。
そして、もう一つの大きな壁と門を通ると、それは立派な王宮が待ち構えていた。
「勇者様ご到着」
そして、数百の兵士が整列、敬礼し道を作る。
「こちらです。皇子がお待ちしております」
「なんだか、緊張する……」
「エルナちゃん。大丈夫、お姉ちゃんがいるからぁ……」
全くもって頼りなさそうな声を、出しながらも、王宮の中へ進む。
「この扉の先に皇子がいらっしゃいます」
大きな扉を開けると王の間と言うに相応しい広さに玉座。そこに座っている犬耳を生やした少年がこう呼びかけた。
「勇者よ、よく来られた」
皆は膝をつき首を垂れた。釣られてエルナ、クリスタも膝をつく。
「まずは、父が不在の為この様な若造が相手で申し訳ない」
「いえ、皇子へお会いできて感激です」
「そうか、そうか。我と同じ歳ぐらいで驚いたな。ボール遊びは好きか?我はな、一日中遊んでいられるぞ! ボール遊びは楽しいからな!」
正月に従兄弟が遊びに帰省した時のように目をキラキラさせながらの突然のお誘い。
「皇子、本題へお願い致しまする」
皇子の隣にいたのは、あの教会老人。結構いい身分なんだな。
「これは、失礼した。で、なんだっけ、エルフの森にボール見つけにいくんだっけ」
「至高の酒でございます」
「あ、そうそう。それそれ」
皇子の態様で、心配になってきた。ここの皇子は大丈夫なのか。
「それでは、まず勇者に資金とこの至高の酒を与えよう! 心して受け取るが良い!」
と全く別の話をし出してきた。元気で生意気な子犬にしか見えない。そして、召使いが差し出してきた資金とケモノミチと書かれた至高の酒を受け取った。
「今、ここで飲んでみてくれぬか?」
「は、はい」
またも、召使が器を持ってきて、至高の酒を注ぐと味わい深い匂いが立ち昇る。ブランデーか。
器を口にして、飲み始める。最初に感じたのは、甘みそして跡に残る苦味。ストレートだからこそ感じる。本来の味に深々と楽しむ。なんだか、体がむずむずしてきたような。そう感じた時。エルナのお尻から猫の尻尾そして猫の耳が生え始め手足が猫化し始めた。
「おお、これが酒豪の導きの力」
「私の手足が猫に‼︎ 尻尾も!」
「あら、可愛い! エルナ可愛いわ!」
「獣人の力、存分に発揮するがよいぞ!それとな。えーと、あ、そうだ。エルフの森に至高の酒を取りに行ってもらうのだったな。カナリア外交官、勇者達を森へ案内してやってくれ」
「はい、畏まりました。皇子」
前へ出てきたのは、耳のとんがったイケメンで美しい女性だった。
「カナリア・カフ・エインと申します。お見知り置きを」
「よろしくお願いします」
双方、お辞儀をする。続けてクリスタもお辞儀をした。
「もう、これでおわりなのだろう? 勇者、我と遊ばぬか! ボール投げるだけでいいのだ!」
遊びたくてうずうずしていたのか、終わるや否や遊びのお誘い。
皇子相手にとってこいをしろと。なんとも複雑なお誘い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます