第8話 求めていた心
クリスタから教わった魔力量を上げる特訓。まずは指先から得意な系統の魔法を少しづつ出していく。
「お漏らししたんだっちね」
「うるさい! 今食事中だから」
「ほら、喧嘩しない。ラズリも最初魔法使ったら暴発してたじゃない。」
「でも、漏らしてはないっちな。」
「もう、失敗しないから」
と、少し涙ながらに言うと
「ごめんだっちよ」
謝ってくれる。優しいんだから本当は。
ご飯を食べ終えると次は勉強。この世界の計算法やら種族間の話方習字やらを習う。
この世界で使われている文字・言葉は六語、エルフが得意とする魔法陣を描くときに使用する魔法語、悪魔や魔物が話す書くために使用する魔語、ドワーフが武器や防具に付与魔法をするときに用いるルーン語、人種が通常時話す書くファル語、獣人が以前まで使用していた古語である獣語。天使や教会の司祭などが使用する天語。そのうち天語は母から習得済み。
計算は、難しくはない。前世と殆ど計算法は変わらないし(記号が変わったぐらい)クリスタから、出された問題を解いていく。
「疲れたぁ」
「まだ、3問しか解いてないよ、がんばろ?」
「魔法使いたい」
私は魔法に興味を持っていた。というのも成果が目に見えるからで、実感があるのもいい。
「じゃあ、後、五問解いたら」
ちゃっちゃと終わらせる。筆が進むのも、異様に早くなるのは、目の前に報酬があるから。それならば、頑張る他ないからだ。
「終わった!」
「よくできました!」
これで心置きなく魔法に打ち込める。
「今日は魔力調整をしていこう」
といい外ではなく、中でやるようだ。椅子に座って人差し指を立てる。
「こうして人差し指に魔法を使って」
クリスタの指先から水玉が浮かんできた。
それに続いてエルナは、見様見真似で魔法を扱う。練習してきた成果を、ここで。指先から、小さな炎が立ち上がる。
「いいねぇ! その状態で少しづつ大きくしていって」
徐々に大きく。魔力のバルブを、優しく開く様に。緊張と集中が、入り混じる。
「いい感じ!」
強火のライター程まで火柱は、高くなっていく。
「はい! そのまま!」
そう言われて、何故か息を止めてしまった。反射的に。そして気づいた時には、息をしている。
やってて楽しい。悪戦苦闘するのはきらいじゃないから。私はこうして魔法の使い方を覚えていった。
魔法の練習も、今回はこれで終わりを迎えた。窓の外は夕日が沈んで、オレンジ色。だけど、明日を迎えるのが楽しみで、早く早くと急かす心が、魔法を求めているのが分かる。もう魔法中毒かもしれない。でも、もう中毒で死ぬのだけは、勘弁願いたい。
明日も勉強と魔法。変わらぬ日常。これでいい。
私はベッドに横になり、夕食まで休憩する。ふと甦るあの光景。風化することの無い恐怖と憎しみ。そして悲しみを。瞼が重く沈みこみ涙と共に眠りについた。
夢が悪夢と変わらぬ様に願って。
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