第7話 教師と習う者
共に暮らすことになったエルナとクリスタ。
最初こそギクシャクした仲だったが、暮らし続けると相手の事も、わかってくる。兎なのに人参ぽいものが嫌い。勇猛果敢。色々知れた。
そんな彼女に私は、怒られながらも、今勉強している。
「淵原人こと、第一種族は人間。天使に悪魔、そして動物。この世界にいる、全ての先祖」
「そう、そして異種交配を、繰り返していくうちに、エルフ種や獣人種が生まれてきたの」
この世界の成り立ち、一万年の歴史は元いた世界より、薄っぺらそう。要所だけを抜粋して、教えてくれてるのかも、しれないけど。
「第二種族はさっきいったエルフや、獣人。悪魔と人間が交配してできたゴブリンやドワーフとか、他にも沢山いるの」
私はふと気になった。
「人間は生き残ってる?」
「生き残ってはいるけど。どうして?」
「いや、気になって」
「人間たちは獣人やらエルフたちにしか、交配しなくなって、純粋な人間はまれにしか、生まれてこなくなった」
「ほう。」
なんだか、この世界も似ているところあるんだな。
「そして、それぞれの種族に分かれた。これ以上の混血を防ぐために。ってとこかな」
「戦争は起きなかったの?」
「戦争はね~、至高の酒、元い酒杯を巡った争い、ぐらいかな。世界を巻き込むぐらいのは」
「酒杯?」
「エルナちゃんが持ってきたそれ。酒杯」
「これが?」
「うん、酒杯は神が作って地上に落とした。一種族に一つ。飲めばその種族特有の能力が身に着く」
私の羽が生えたのもやっぱりこの天酒か。
「だから、強欲な種族の王は、奪い合うようになってね。だけど、能力が付くのは、その種族だけで、他の種族が飲んでも、意味がないのです」
「どうやって、奪い合ってきたの」
「それは、銃や魔法とか、導きかな」
魔法か。
幼い頃読んだ意味の分からない文章が並べられていた本を思い出した。
–––魔法を覚えるならば、最初は詠唱からの方がいいだろう。無詠唱は経験を重ねなければ強くはならない。先代が作り上げた詠唱を、無碍にもしない為にも。
そこから先は何だか理解が及ばない、文章が綴られていた。
「私にも、魔法は扱えるの?」
「ええ、勿論扱えると思いますよ! やってみますか?」
出来るならやってみたい。私を守ってくれたアリス・ルシフェル、彼女が最後に打っていたのが魔法だろうし、何よりあの時魔法を覚えていれば、逆に守れたかもしれないから。時すでに遅しだけど。
「やってみたい」
私の本気の顔をみて、クリスタも教える気満々になった。
「息抜きも、必要ですからね!」
そういい、テーブルから離れて外へ出る。相変わらずいい天気。庭事態は狭く木柵で囲まれていて、三本の木があり、花壇がありといった感じ。
「今から打つ魔法は自身の、導きに反応して放つ魔法です! 初級なので詠唱も短くて、覚えやすいのが良いところですね!」
「それでは詠唱から、我が導きを持って示せセレスティアル」
クリスタの詠唱後、猛烈な勢いで大地が、吹き荒れていく。初級でこの威力。クリスタは結構強かったり……なるほどと、頷き私も唱え始める。
「我が願いを持って示せ。セレスティア――」
身体中から込み上げて来る熱。何が出てきそうな感覚。身震いをした瞬間。私は神経が切れたかのように倒れ込む。そして漏らした……ぴちゃと自身の尿で汚れる。
「あわわぁ、」
慌てるクリスタは、エルナを抱き抱えて、寝室に連れて行く。衣服を全部脱がせて、ラズリの服に履き変えさせる。その姿を妹達にも見られながら。
1日が経った頃ようやく目が覚めた。口の中にほろ苦さを感じるが、薬でも飲まされたかな。と冗談混じりに起き上がる。
(あんなに魔力量が少ないとは、教える順番を間違えました)と独り言が聞こえてくる。
その直後ドアをノックして入って来るクリスタ。
私と目が合う。
「あ、おはよう御座います! 気分はどうですか?」
「うん、ちょっと心に、ダメージが残ってるぐらい」
クリスタは椅子に腰掛け、手に持っていた果物を置く。
「すみません、これでは、教師失格ですね」
「クリスタは悪くないよ、私がドジしただけだから。魔法を教えて先生」
「ありがとう。エルナが昨日意識を失しなったのは魔力
「はい!」
また、あんな無様を晒すわけにはいかない。恥ずかしいし……
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