第6話 死ななければ良いだけの話

 空を飛んでいると、清々しいのに地上に降りると、思い出してしまう。さっきの事。兎姉妹は大丈夫なのか。あんな幼い子をおいてきて。

「迎えにいこう。殴られてもいいから」


 折り返す先ほど戦った場所へ。もやもやは捨てきれない。災厄な状態を想像してしまう。戻ると姉を囲み、兎が周りを警戒し妹兎が姉兎の容体を見ている。大惨事になってはいない。


「何しに来たっちか? 鳥に助けてもらう義理はないっちな」


「どいて、私は鳥じゃない天使だから!」

 兎をどかして姉をおぶって兎と妹は担いで空を飛ぶ。さすがに重たいがここは、踏ん張りどころ。


「放すっち!」

「たべられちゃうぅ、おねぇちゃにぃ~!」

「はにゃちにゃしゃい、このにけぇ」

「お家に帰るだけだから! 食べないから!」


 背中で暴れだして、またもや墜落しそうになったが、何とか立て直した。

騒がしい姉妹を、連れて帰宅。暴れ疲れた妹と姉をそっと寝そべらせて。


「これで、心置きなく旅ができる」

 立ち上がり去ろうとすると足元をつかまれる。まだ懲りていないのか。もう、殺されるのは……。掴んできた手を無常に蹴り払う。


「まって」

 掠れた声で私に問うてきた。


「なに?」

「本当に、ニケじゃないの?」

「ニケってなに?しかもいきなり殴られるし」

「ごめんなさい」

「ごめんで済んだら私、殺されても良かったと思う?」

「いいえ……」

私はこのかたを勘違いで……また先走ってしまった。と心で落ち込んでいた。



 その言葉を聞いても彼女にはまだ、強い哀愁が漂っていた。それをみて私は迷っていた。過ちを悔いる姿。

 前世とは全く違う環境下で生きていくには、知らなければならない。私は姉兎に近寄り。

「それじゃ、ここに住まわせて。そして私に色々教えて」


「え、はっはい!」

 殺されそうになっていた者が住みたいと提案してきた。姉兎には驚きしかない。

差し伸べられた手を握った。


「うん、これからよろしく。私はエルナ・リシュブール」

「クリスタ・ノベールです。」



 突っ伏した兎の手を取り、起き上がった。互に握りしめて情を厚くし、こらから始まる旅の中で彼女らがどのような経験を積み、成長するのか。知る由もない。

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