第3話 そこは僕が大事にしてた場所
夕日とは違う赤く明るい光、聞こえてくる、人々の甲高い悲痛の声が。
寝ぼけていた頭が、感じ取る。いかねばならないと、何が起きているのか、家族は大丈夫か。
横で一緒に寝ていたアリスを揺さぶり起こし、集落へ急いだ。アリスは引っ張られるがまま目をこすり付いていった。
「……」
集落に着いて最初に見た光景は、焼け野原と化してい行く住民たちの家。あまりの
次にとった行動は、炎の中へ走出すことだった。アリスをおいて。
「ちょっとまってよ!」
友を置き去りにして、灼熱を搔い潜り、あたりを見渡す。すると人を軽々持ち上げる、異種族がいた。私に気づいたそいつは、死体となった同族を地面へ放し、話しかける。
「君はたった一つの物を愛したことはあるかい?そうたった一つ」
異様で不気味で。抵抗できるはずのない私は、答えるしかないのかもしれない。立ち向かう手立てなどない。嘘でもいいから
「ない」
「そう、嫌いじゃないよ。そういうのも、あと君だけかな。村の人はまだいるのかな」
「私のお母さんも殺したのか」
震える拳と声。反撃したいのにできない悔しさ、殺したいのに殺せない未熟さを痛感する。
「どれが、君のお母さんなのかは、しらないけど。その辺に転がって、ないかな」
そいつの周りには三人の死体が横たわっていた。一人は髪のない老人。二人目は私くらいの小さい女の子。そして三人目は…金色に輝く、長髪の女性。私のお母さん。
「おかぁ……さん……」
私は願っていた。殺されていないと。だけれど現実は無慈悲にも、突き付けられる母という死を。唐突に訪れる、お母さんの喪失。深い悲しみに包まれて私は脱力してしゃがみ込む。
「エルナぁぁぁ!! どこにいるの??」
そう叫びながら
抱きしめられた反動か、涙が零れ落ちた。その一粒一粒に悲しみや憎しみがつまっているのだろう。とても拭うには重すぎる涙だったけれど、全てを受け止めた。その優しい胸の中に。
「ボクの大事な人を……こんな目に……」
「君の大事な人、動かなくなちゃったね」
そいつは私たちを嘲笑った。
「エルナ一緒に地上に、逃げよう。ボクには翼がある。真っ黒だけれど……、」
手をとって起き上がれさせようとするも、まだ立ち上がれずにいるエルナに声をかける。そしてアリスは覚悟を決める。そう勝てるはずは、ないだろうけど。
「これが最後になるから聞いて、ボクはエルナが大好き。この大事な場所時間、君と居れて楽しかった。さようならボクの大事な人。そして僕の大事な心の居場所」
ボクの家に居場所なんて無かった。親には殴られるし、怒鳴り散らかされる。そして夜には汚される。だけど君は、ボクの手を取って連れ出してくれた。暗闇から、朝日が昇る雲の上に。アリスは興奮気味に涙を浮かべている。エルナがボクにしてくれた。今度はボクが、朝日に連れ込む番だ。そして君の太陽になる。
そして私は見ているだけだった。
「もういいかな、待ってあげたし僕の番だよね」
男はつまらなそうに何かを唱えだした。
「星の導きを持ってして、この地を焼き尽くさん」
そいつは片手を振り下ろしそれとともに、夜空から降り注ぐ火球は、流れ星の様で美しかった。
そんな中、アリスは覇気に満ちた表情で腕を前にかざして魔法の言葉を呟く。その言葉を唱え終えると手先に熱いエネルギーが集まり、指先から放つ。だけれどその魔法は奴には当たらず、避けられる。
「そんな、ちんけな魔法で、守れるの?」
近づいてくる異種族の男。アリスは続けて魔法を打つ。奴には効かないとしても、打ち続ける。
「エルナ、逃げて」
竦む足を動かし何とか立ち上がった。アリスの背中を観ながら走り出して、あの雲の端まで向かった。そして、その場所に落ちていたのは、先ほどまで飲んでいた天酒。アリスとの繋がりを感じられる。
私は思い出としてこの酒を持っていくことにした。その後、雲の上から飛び降りる。
「私は飛べる!」
そう思い込む。こんな時翼が生えていたらと思っていると突然、背中から羽が生え、はばたかせるが、うまく扱えずそのまま落下して森に落ちる。叫びながら撃ち落されたかの如く、そのまま木々に突っ込み不時着する。
そしてまた眠りにつく
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