一人が嫌なのに、

白川津 中々

「今日、みんなで飲みに行くんだけれど、君も来なよ」


「すみません、仕事がまだ」


「そうかい。頑張るね。じゃあ、また今度」


「……」





 一足先に退勤する同僚を尻目にPCに向かう。モニタには明日に残してもいいタスクが映り、やる気を削ぐ。

 飲みに行けばよかったのに、何故だか僕は断った。本当は話したかったのに、馬鹿なことを言い合って笑いたかったのに、僕は彼らを拒絶した。寂しがり屋のくせに人を避ける癖は昔からで、今も昔も僕の周りに誰もいない。無下にしてきた誘いの数だけ暗鬱が陰っている。人から離れて、それで話しかけて欲しいのか。歪んだ欲求だよ。反吐が出る。それが、それが、それが僕だ。情けなく幼い、哀れで矮小な存在が、僕だ。




 モニタを見る。

 進んでいないタスクを眺め、僕は一人溜息をついた。

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一人が嫌なのに、 白川津 中々 @taka1212384

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