宇宙BL
junhon
第1話 BLは宇宙を救う?
その日、女子大生・
休日の
フォンフォンフォン――
何やら
「ユッホッ」
思わずピンク・レディーの歌の出だし調で声を上げる。
それはいわゆる古典的UFO――アダムスキー型だった。
「うわぁあああ!」
文花は身の危険を感じて走り出した。しかし当然UFOの方が速い。
その機体が文花の真上に
ミョーーーン。
そしていささか
フワ――
文花の足が地面から
「わ、わ、わわっ」
文花はその光線に吸い上げられ、UFOの中へと消えていった。
「ここは……?」
文花は身体を起こし、周囲を見回す。
金属の色そのままの
アダムスキー型の形といい何となくレトロなSFと言った
「ここは……UFOの中なの?」
そう文花が言ったタイミングで、何も無い壁に
光の中から現れたのは、
その目は大きくてつり上がっており、頭部に
いわゆるグレイ――リトル・グレイと呼ばれるタイプの宇宙人だった。
UFOは70年代のアダムスキー型なのに、乗っているのは90年代以降のグレイとちゃんぽん状態である。もっとも
現れた宇宙人は二人。
「ワレワレハ」
「ウチュジンダ」
いかにもな発音でそう言った。
「……なんかテンプレのオンパレードね」
文花の中では
「なんやねん、
「そやで、いかにもな宇宙人を演じてサービスしたったのに」
「なんでいきなり
文花は思わず突っ込まずにはいられなかった。
「なんや、これはこの地域の言葉やろ?」
「そのはずやで、通信教育で勉強したさかいな」
「ああもう! 400キロぐらいズレてるのよ!」
「そんなの誤差やろ?」
「そやで、UFOならひとっ飛びや」
「なんでそこだけ宇宙感覚なのよ!」
文花はツッコミ
「とにかく何の目的で私をさらったの? は!? もしや人体実験に……」
「まあ、そやな。ワイらは地球人の調査に来たんや」
「そこで
「それは一体?」
興味を引かれて文花は
「何でも地球人は動物みたいに
「全く信じられへんわ。キモいわ~」
「はぁ? じゃあ、あなた達はどうやって子孫を残すのよ?」
「そんなのクローニングに決まっとるやん」
「それが知的な種族のやり方ってもんや」
「おまけに
「ワイらもう二千年くらい生きとるで」
確かに、文明が進めばいずれ地球人もそうなるかもしれない。クローン技術自体は確立されていると言って良く、すでに様々な動物のクローンが生み出されている。
「まだまだ地球人は
「ほんまや、服着た猿や」
「だったらその猿に何の用よ?」
自分も
「一応、人間の交尾のデータを取ろうと思うてな」
「ほら、曲がりなりにも言葉を
「で、サンプルとしてあんさんをさらったんや」
「あとは適当にオスも
「ひぃ!」
文花は悲鳴を
と、自分が持っている同人誌のことを思い出した。
「ま、待ちなさい! セックスの資料ならここにあるわ!」
「なんやこれ?」
「これはね。マンガという地球の表現手段。そうね……絵物語と思ってくれればいいわ」
そう言いながらページをめくり、クライマックスの合体シーンを開いて宇宙人達に見せつけた。
「これこそが地球人の愛の形なのよ!」
そこに
「ワイら地球人の顔の区別がようつかんのやが、こっちがオスでこっちがメスか?」
「いやでも、こっちにも胸がないで」
「ふふん、これはどっちもオス――男同士よ」
文花は
「はあ? それじゃあ子孫が残せんやろが」
「意味あらへんやろ?」
「そこがいいんじゃない! 子孫を残すという生命の本能から解き放たれた
文花は宇宙人達を前に熱弁を
「いやしかし、ワイらが知りたいのは……」
「いいから読みなさい! ほら、あなたはこっち!」
鼻息
「な!? なんやこれ!
「う、嘘やろ……こんなの入らへん」
「そもそも何で男性器は大きくなるんや?」
「それは手段と目的をはき違えとるで。女性器の中に挿入出来るよう、
「でもワイらの男性器はフニャフニャやな」
「そやな。ションベンする時に
そんな会話を交わしながらも、宇宙人達は次々と同人誌を読破していった。
「あれ? なんかおかしいで。
「わ、ワイもや。
「く、苦しい……」
「わ、ワイもう
一人がもう一人の身体を押し倒した。
「こ、こらっ。お前何を!?」
「ワイらも交尾してみようやないか」
そう言って相手の銀色スーツを
「ひぃっ、ワイらは男同士やで!」
「いいわ! いいわ! さあ、あなたの想いを相手にぶつけるのよ。それが愛! たぶん愛! きっと愛!」
まさに目の前で繰り広げられようとするBLシーンに文花は手に
「愛……」
「愛……」
宇宙人二人は見つめ合う。
「ワイには難しくてよう分からへん。でも……」
「胸に何か熱い想いが込み上げてくるんや。これが愛なんか?」
「ならばその想いを相手にぶつけて確かめてみるのよ!」
「分かった。いくで」
片方の宇宙人は相手のアナルに生殖器を
それは遠い昔に忘れ去ったはずの本能だったのだろう。
「ああっ、そこは……」
そして相手の中に
「あ、あ、あああああーーーーーっ」
「嬢ちゃん。あんたには大切なことを学ばせてもろうたで」
夜の公園の
「ワイらは合理主義を突き詰めるあまり、心という存在を忘れてしまっておった。だけんどそれを思い出すことができた。感謝するで」
そう言って宇宙人は
「……そやね」
もう片方の宇宙人は
「ホンマあんたに会えて良かったで」
そう言って宇宙人達は右手を差し出した。
文花はその手を
「世話になったな。もう会うこともあらへんやろ。さよならや」
二人の宇宙人は
そしてフォンフォンという音を発しながらUFOが浮かび上がる。
文花は飛び去るUFOを見送った。
「彼らの星にも
文花はUFOが消えていった星空を見上げて
宇宙BL junhon @junhon
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