最終話 通常運転

 神奈川県主査しゅさ

「これ、別の形に転用出来ないか? 警戒アラートは何度も無理だ。まぁ、TOKYO_Metropolitan & Cosmopolitanが本音漏らせば、そこそこ面白くなるから、うちは恵まれてるな」


 神奈川県主任主事しゅにんしゅじ

「市町村、本物らしく育ちましたし、試験を超えたら『VR神奈川移住計画(仮称)』βテスト版のダイブ県民、募集出来んじゃないすかね。全国で一番にやらないと意味ないっすよ。

 名前は『ダイブで始まる神奈川生活』……古いか。古いなら、もっと高齢者の方が課金してくれますね。あ、高齢者用VRヘッドセットの開発依頼して返礼に付ける、ってのは、どうすか?」



 20XY年。

 ふるさと納税の返礼として、神奈川県はフルダイブ型VR『神奈川は今日も通常運転 ~私はコレでセンターやめました~』、通称『かなコレ』の提供を開始する。

 『かなコレ』はVR県民生活でエリア親密度を上げると、擬人化した市町村キャラが現れ、過去へのタイムスリップ・イベントが発生。主に鎌倉幕府の花形時代から地方都市化の歴史を体験出来た。

 課金、つまり更なる納税でNPC静御前のソロダンス等、よりディープなイベントも味わえる。

 納税で異世界に行ける『かなコレ』は人気を博し、それを機に、返礼品にVRシティが増えて行った。やがて国は1日の10時間以上をダイブで過ごす人々を対象に、VR住民税選択制度を導入する。


 各自治体は富裕ダイブ住民を獲得するため、現実以上のご当地っぽさを味わえるVRシティ作りに今日も余念がない。

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神奈川は今日も通常運転 小余綾香 @koyurugi

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