番外編 有希のいない元の世界線
※誰も幸せになりません
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有希が死んだ事を知って深く落ち込む父と母。
有希の部屋で遺書のように書き置きされてある手紙を発見する。
両親宛のものを読み、さらに一つ楓宛のものがあったので記憶喪失になったことは知っていたが一応と楓宛のものだからと楓の母親に預ける。
預かった楓の母親は楓宛のものだから一応それを楓に渡す。
楓はそれが有希のものだと知って少し戸惑ったが読むことに決めた。
文章を読み始めると何やら違和感があった。字、そして遺書この二つが自分の中でハマった。
これは楓が有希を助けたときに有希が手にしていたものだった。内容は違えど一緒に勉強していた思い出が蘇り、ノートに書いていた字を思い出す。所々震えている字はあの頃に書かれていた遺書と同じで死ぬ事を恐れながらも生きるのが限界に感じていた有希のものだ。
わたしはなかったものがわたしの記憶を埋めていくのをはっきりと気づいた。
「ねぇ楓、大丈夫?ぼぉっとしてたけど……」
「え、あ、うん大丈夫だよ。それよりなんでわたし…」
「そのことなんだけーー」
「ねぇ、お母さん! 有希は有希はどこにいるの?今、学校?」
「え……何、言ってるの?その紙をちゃんと読んだ?って楓、思い出したの?!」
「え……?」
思い出した?お母さんの言葉は楓には届かない。
わたしはお母さんから視線を移し手元に目を落とす。
楓へ
楓、これを読んでる時はもしかしたら、もしかしたら記憶を思い出している時に楓に渡されて読んでるかもしれない。それなら死ななきゃよかったかも……
楓、君は友だちを救って記憶喪失になったんだ。それで僕のことも忘れちゃって…嫌われちゃった。だから嫌われたくないから死ぬことにしちゃった。もし、記憶が戻ってるなら僕のことは心の片隅に置いて自分の人生を歩んでほしいな。
もし。記憶が戻ってなくてこれを読んでたら、僕の存在は無くなったからもう現れることはないから考えなくていいよ
じゃあ幸せでね。楓
え………なんでわたしが記憶を無くしてたから?
わたし、酷い態度とっちゃってた?
「お母さん……わたし有希に酷い態度取ってた?」
お母さんは困り顔で目を瞑ったりうーんと唸ったりしていた。
「正直に言って!」
わたしは耐えられずつい叫んでしまった。
「私に有希君と会いたくないとか叫んでたのを聞いちゃったのかもしれないわ。いつも有希君が来てた時間に叫んでたから」
「え、それで離れていったの?」
「気があまり強い子じゃなかったでしょ?だから抱え込んじゃったのかもしれないわ。段々距離を取るようになっちゃって、私も彼がどれだけしんどい思いをしてたか考えられたらよかった……」
(私は困った。娘を責めたくはない親だから。でもどうしても二人がずっと一緒にいた時のことが脳裏によぎってしまう。必死に有希君が思い出させようとしていた過去のこと……楓と仲のいいままだったら彼は死を選ばなかったのかと思うと……)
「お母さん、わたしちょっと散歩しにいってくルネ」
「え、足は大丈夫なの?」
「うん、ダイジョウブダカラ」
「ならわかったわ。でも後追いはしちゃダメだから」
母の忠告は楓の耳には届いていなかった。
ああああああああ!!!!
なんでわたし、そんなこと言ったの……
バカバカバカバカバカ
「ねぇ返してよ、ねぇわたし…………わたしに有希を返してよぉ」
見せかけの友情とか人気とかそんなものなんていらない。わたしはただ有希のそばに居たい。
「アハハハハハハハハ……わたしのせいで有希が死んだわたしが有希を殺した……一番大事な人を自分で殺めた?」
わたしは狂っても死ねなかった。勇気がなかった。死ぬことへの恐怖なんて耐えられなかった……有希はその壁を越えたのに。
わたしは苦しみが続いた。有希のいない日々の始まり……1日や2日ならなんとか耐えられた。でも1週間が経った辺りから甘えてくれる、甘えられる相手がいなくたなったこと、お母さんでは足りない。
そばにいてくれる存在、一番お互いを分かり合っている人が居なくなった事でわたしは限界にきた。
だから離脱する事にした。この世界から。
「ごめんね、お母さん。わたし、耐えられないや。待っててね!有希。有希はもっと苦しかったかもしれないけどわたしも行くからね…有希は私が殺した。私は有希に殺された。これで一緒。だよね」
記憶喪失で幼馴染を忘れる 夏穂志 @kaga_natuho
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