隣の王女、皇国の養子になる。
1,都市国家ルミナス皇国
結論から言おう。私は彼の条件に飲まれルミナス家の養子になることとなった。
家柄の詮索はしないことからなんとなく私が誰かわかっているのだろう。
確信は欠片の一つでさえない。
「それにしても、本当災難だったねぇ。実の親からそんな捨てられ方するなんてねぇ……」
「いえ。わかりきってたことなので。父は規格外なのでともかく。兄や姉と比べて私に優れた点は一つたりともないですし」
私がそう言うと、アルゴス様は
「そうやって自分を卑下しない方がいいよ?どれだけ弱々しい人でも人間どこまででも成長できるんだからさぁ」
「そう、ですか……」
いまいちわからなかった。今まで自分を卑下することが正解の世界で生きてきたのだ。そんなことを言われてもそんな感性は持ち合わせてやいない。
「まぁ、辛かったら俺のところに来てよ。ちょっとくらいなら話聞いてやれるから、さ」
そういうとアルゴス様は目線を逸らした。もっと言えばちょっと赤面していた。
……流石に恥ずかしかったのだろうか。
数分もすると、隣国のルミナス皇国に到着した。
「あ、アルゴス殿!お疲れ様です!」
「あ、門番くん。君たちもお疲れぇ」
「いつも言ってますけど僕は門番くん、じゃなくてレオルですってば」
門番の方がそう的確にツッコミを入れる。
その明るい雰囲気についつい私は微笑を漏らした。
「あ、やっと笑ったぁ。全く、感情薄い子かと思ってたけど、その辺は正常っぽいねぇ」
「え、あはは……」
私にとっては面白かったら『笑う』、という習慣がない。故に笑い方があまりわからないわけだが。
もっと言えば私が笑えているかの判断ができない。
「まぁ、俺の父上に会えば多分緊張なくなると思うけどなぁ……」
「そ、そうですか……」
明るすぎる人でなければいいのだけれど……。と心の中で呟く
「どうせだし、ちょっと観光する?」
「え、いいんですか?」
「勿論。俺の方で話は合わせておくし」
「な、ならお言葉に甘えて……」
人生で初めての他国での観光。童心の残る私にワクワクするなと言う方が難しい。
「いってらっしゃい。楽しんでおいで。あ、あと」
話を聞く前に私は飛び出す。申し訳ないけど好奇心には尊敬では勝てなかったようだよ。
「あっ……。まぁ、兄ちゃんならなんとかしてくれるでしょ」
王宮にて、俺ことアルゴスは皇室に向かっていた。
「父上。ただいま戻りました」
「おー、よく帰ってきたな。それで、奴隷商の件は」
「順調……とはやはりいえませんが着々とは」
「なら良かった。それで、門番の話によると何やら幼い女の子を連れていた、と耳に挟んだのだが」
父上はにやけ顔になっている。はぁ、こういう話になると父上は途端に威厳を砕け散らせる。
「売られかけていた少女を引き取っただけですよ。どうせなら養子にして育ててもいいかと」
「おい、勝手にそこまで決めるな」
まぁそう言う反応になるだろう。だが、俺もここで引き下がるわけには——
「まぁ、反論はしないが」
「あの少女は——って、え?」
「何だ?そんなに驚くことか?我は子供の願いは節度を守ってなんでも答えてやるつもりなんだ。それはわかるであろう?」
身に染みるほどわかる。どれだけ父上が親バカであるかは国民の間でも広く知れ渡っているほどだ。
「今すぐにでも呼んできなさい。養子として迎える準備を——」
「あの、父上」
「どうした、アルゴス」
思っても見ない好条件に驚きつつ、
「今、彼女観光しているので野放し状態なんですけれど……」
そんな皇室の事情など出知らず。
私は存分にこの街を楽しんでいた。
お金は持たされていないため買い物などはできないがそれを抜きにしても有り余るほどだ。
他国の文化に触れてこなかった私だからこそなのだが。
……そろそろ、戻った方がいいかな。
そう思いきた道を逆走しようとして——。
「痛っ!」
後ろから猛スピードで進んできた人に勢いよくぶつかる。
「おい何よそ見してたんだア?この〈
「え、ごめんなさい?」
周りの少し忌避する視線から察するに悪名高い人間なのだろう。存じ上げないのだが。
「謝罪で済ませると思ったか?お前の身体を売り捌いてもまだ足りねェ。そうだな……」
不良さん(先の男)は少し悩むそぶりを見せた後。
「よし、お前を喰わせてもらおうか」
……一体最初に言った方と何が違うのだろうか。
精霊戦線 〜災厄の孤児、覚醒する〜 神坂蒼逐 @Kamisaka-Aoi1201_0317
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