第5話 タンク

―彼女が語るは西暦2023年からおよそ3000年後、(西暦約5000年)に至るまでの物語―



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今(2023年)からおよそ100年後(約2100年)、地球温暖化が更に深刻になる。人々は地球温暖化による人類滅亡を防ぐため、地球上で生き抜くための技術開発を進めると共に、地球に似た環境を持つ惑星を探すため、沢山の宇宙ロケットや衛星を飛ばした。

それからおよそ100年後(約2200年)、ついに日本のある科学者が、地球温暖化を解決する技術を生み出す。それは後に『 タンク』と、呼ばれるようになる。タンクは人間の遺伝子と「コトブキソウ」と呼ばれる他の惑星の植物の遺伝子を兼ね備えた、人造半人間である。「コトブキソウ」の特徴は地球上の植物よりはるかに光合成の効率が良い所だ。人の感情と光合成という2つのメリットを持ったタンクは、あっという間に世界で製造・使用されるようになり、地球温暖化は年々減少していった。

そこから更におよそ250年後(約2450年)、タンクが光合成することによって生まれるエネルギーが注目を浴びた。タンクは光合成をすることによって生まれるエネルギーを体に蓄える。そしてそのエネルギーは「契約」と呼ばれる方法で人間と共有することが出来る。更に人間がそのエネルギーを使う事で起きる反応を「魔法」と呼ぶことから、タンクが作り出すエネルギーを『魔力』と呼ぶようになった。

それからおよそ4050年がたった今(西暦約5000年)でも魔力と魔法の謎は解明されていないが、法律や憲法、施設や建物などの日常生活に魔法はすっかり溶け込んでいる。更に効率の悪い電気製品のほとんどは魔力製品に変えられて、電気は魔力で賄われるようになっていた。そのため、少なくても一家に1体、裕福な家庭では1人1体、タンクを持っている。



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「………こんな所かしら。さすがにこれだけだと難しいと思うけど、まぁタンクっていうのがあるって事くらいを覚えてれば良いと思うわ。分からない事があったらいちいち聞いてくれていいわよ。」

そう言いながら首を少し傾ける。

「まさか………そんなことになるなんて…人類って、恐ろしいですね………。」

正直、絶句だ。まさか未来の地球がこんな事になっているなんて…。

「それでね、リュウ君。私から提案があるのだけれど。」

彼女の澄んだ瞳が真っ直ぐとこちらに向いていた。

「はい。なんでしょうか?」

少し戸惑いながら返事をした。

「私とあなたで契約をしない?」

向けた視線をそらさずに彼女は言った。

「契約……?」

「契約と言っても言葉上だから、約束……と言うのが正しいのかしら。

あなたが差し出すのは知識よ。私は昔の歴史や生活に興味があるの。それを話してくれればいいわ。代わりに私はあなたの身の回りの物をそろえましょう。食べ物とか家、あとあなたのタンクも。」

これは………。断る理由が無い。何しろ自分は今日泊まる場所も食べるものも常識もないのだから。

「………………分かりました。その条件でお願いします。本当に、ありがとうございます。」

そう言うと彼女は微笑んだ。

「そう言うと思ったわ。ちょうどこの馬車が私の研究所に着くところだから、そこでまずは、あなたのタンクと会ってもらうわ。」

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タンク―未来の地球の物語― よるのうみ @LiLi6110

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