第4話 未来
ナーシャの後をついて歩き始めて十数分。一面芝生の丘を歩いていると、ポツリと、小道と馬車が現れた。彼女は馬車の前で歩くのを止め、僕に馬車に乗るよう促した。しかし、それは馬車の見た目をしているものの、車輪が無く、代わりに底は青白い光を出しながら地面から数十センチ浮いていた。おまけに馬車を引いている真っ白い馬の足は膝から下が幽霊のように透けて消えていた。一瞬驚いたが、今更ためらうことなど何も無いので、素直に従った。自分が馬車に乗ると、ナーシャも後に続いて乗った。すると、先程まで見当たらなかったドアが、まるで瞬間移動のように現れた。それからナーシャがドアの横に手をかざすと、水色に光るキーボードが出てきた。彼女がそれに何かを入力すると、馬車が静かに動き始めた。
「さて、本題に入りましょうか。」
ナーシャは馬車が動き始めたのを確認して正面を向いた。
「あなたが言える限りで良いから、何故ここに居たのか、何をしていたのか、あなたは何者なのかを、話せるところから話してちょうだい。」
僕はその言葉に無言で頷くと、これまでの事を話した。自分が働いていた場所のこと、鏡に呑み込まれてここへやってきたこと、この場所が何処なのかすら分からないこと。こんな話が信じてもらえるのか、心配だったが、ナーシャは最後まで真面目に聞いてくれた。
「なるほど。じゃあ あなたは、この世界が何処なのかも分からないのね?」
「はい。一体ここはどこなんですか?」
「そうね…。もしあなたの話が本当なら、
ここは、あなたが元居た世界の約3000年後の世界……になるわね。」
3000年後!?の世界??つまりここは 3000年後の地球???そんなわけ……
いや、でも芝生の上で見た近未来的な建物……確かに3000年後なのかもしれない…。
ナーシャは話を進める。
「最初に会ったのが私で本当に良かったわね。私は昔の伝統や歴史が好きで詳しいのよ。違う人だったら信じて貰えず、刑務所行きか、信じて貰えても実験所送りだったかもしれない。」
その話を聞いた瞬間に背筋が凍るような気持ちになった。
「あなたは3000年前から来たのだから、その3000年間の歴史は知らないのよね…。」
「は、はい。」
そうか。歴史……。確かに少しも分からない……。
「大丈夫よ。基礎から教えてあげるわ。そうね……。まず、タンクの話でもしましょうかしら。」
彼女はタンクと3000年間の歴史について話し始めた。
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