第3話 出会いの始まり
………僕はどこに来てしまったのだろう…。
最後は自分から飛び込んだとはいえ、やはり不安なものは不安だ。それに、できることならこの新しい地(?)で、今までよりも充実した生活をしたい。建物があるということは、少なからず何かしらの生物はいるのだろう。問題はその生物とどう接触するかだ。どうしたものかと考えていたその時だった。
「…あなた、変わった格好をしているのね。コスプレイヤーか何かかしら?」
と、後ろから透き通った若い女性の声がした。
日本語……?
「あ、あなたは………?」
咄嗟に出した声は自分でも驚く程にかすれている。女性は僕の顔を首をかしげて眺めていた。振り向いてから気付いたが、彼女はモデルのように背が高く、顔もとても綺麗だった。
白ベースの生地に金、青で装飾の施された、透明感のあるドレスがとても似合っている。首の横に垂らしたポニーテールすら美しく感じてしまう。いかにもお貴族様といった格好をしている。
「普通、相手の名前を聞く時には自分から名乗るものではなくて?」
眉根をあげながら彼女は言った。少し…怒っているのだろうか…。反射的に
「す、すみません!!僕は
と言った。言い訳がましくなってしまっただろうか。
「そうなの。私の名前はナーシャよ。聞きたいことは色々あるけど、まず、あなた、許可証は持っているのかしら?」
「許可証………?」
「ええ。」
なんの許可証だろうか……?
「えっと……なんの…ですか?」
恐る恐る聞くと、ナーシャは目を丸くした。
「知らないのね…?そんな人初めてだわ。」
そう言いながら腕を組む。この場所だと常識なのだろうか……。
「この場所に入るのには許可証が必要なのよ。ここは自然が豊かなのと歴史的な場所でもあるの。…知らないということは許可証も持ってないのよね?」
「………はい。」
許可証どころかこの場所の知識も持ち合わていない。
「許可証を持たずにどうやってここに来たのか気になるけれど、その前に、そもそもこんな場所で何をしていたのかしら?」
許可証を持っていないから自分の事を怪しんでいるのだろうか。試しに、
「僕はそんなに怪しかったですか………?」
と、聞いてみると意外な答えが返ってきた。
「ええ、勿論怪しかったわ。特に服装ね。私は自分以外でそれほど昔の服を着ている人を見たことがないわ。ひょっとしてあなたも昔の伝統が好きなのかしら。」
え………?昔の伝統?自分の服装が?
「えっと、その……。」
頭が追いつかない。まさかここが、遠い未来だとでも言うのだろうか。ナーシャは続けてこう言った。
「あなたくらいの歳なら流行りに敏感なものなんじゃないの?」
流行り?こんな場所の流行りなんて分かるわけがない。ていうか、話がどんどん逸れて行ってないか?思い切って
「あの、すみません。言っていることがよく分からなくて……」
と、言ってみた。するとナーシャは、
「なんだかよく分からないけれど、あなたには深い事情がある気がするわ。それに、許可証が無いと政府関係者にバレたら面倒なことになるわ。話も長くなりそうだから向こうで話しましょうか。」
と、言ってくれた。僕はそれに頷き、彼女について行くことにした。
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