第4話
お風呂がないと分かっていても、『はい、そうですか』と諦められるものではない。
俺たち日本人にとって風呂は魂に刻んだもの!絶対に入りたい!!
町の人にも聞いてみたが、皆
「なに、それー?」
という反応だった。
…風呂、ないのか~
「そんなに、入りたかった?」
「そりゃあ。君は入れなくてもいいの?」
「うん。お風呂嫌いだし」
「え、そうなの?」
「だって、お風呂入ると匂い消えるじゃん」
あぁ。そうだった。俺がお風呂に入りたすぎて忘れかけてた。
で、でも!完璧人間だと思ってた彼女にも欠点はあって、多少は人間らしく思えた。
…多少は。ここ重要。
そんな彼女のことも大好きだけどね。
「お兄ちゃーん」
30分前くらいに話しかけた10歳の女の子が声をかけてきた。
「お兄ちゃんが言ってた、おふろって水浴びのことだったんだね!」
「水浴び?」
「うん!あれでしょ?水を浴びて汚れを落とすやつ!」
「え、水?」
「うん!違った?」
「いや、その」
まさか、温かいお湯に入れないだと!?
「それはいつ浴びれるの?」
「いつでも大丈夫だよ!でも、浴びれるとこは基本的に宿なの!宿選びは気をつけてね」
「何に気をつけたらいいの?」
「宿は2種類あって、まず1つ目がただ寝るだけの宿。この宿は水浴び出来ないしご飯も出ない。それで、2つ目は水浴びが出来てご飯もある!間違えると大変だから…」
「そっか、ありがt」
間髪入れずに女の子が話し続ける。
「それでね~。わたしのお家、宿屋を営業してるんだ~」
まさかの営業。
「それでね、お部屋も2つ余ってるの~」
キラキラした目で見てくる。これはもう決定だろ。
だが、その宿は町1番と言われる‘安らぎ亭’だった。ここは安い、美味いで冒険者に評判のある宿だ。今日この町に辿り着いた時、門番の人もここがオススメだと教えてくれていた。
「たっだいま~!お母さん、お客さん連れてきたよ!」
「こ~ら、仕事中は女将と呼びな!」
「まだ仕事中じゃないから大丈夫~。支度してくるね!」
仲が良さそうな親子だ。
「料金の説明は受けたかい?」
「いや、まだです」
「そうか。この宿は1週間で銀貨1枚。そして、何でもいいから動物、もしくは山菜を持ってくること。1週間以内に持ってくることが出来なければ、銀貨2枚になる」
なるほど。自給自足に近い感じか?
「必ず、ギルドで持ち帰り希望を伝えるんだ」
「持ち帰れるんですか?」
「あぁ、ギルドが欲しいのは動物の牙や毛皮。肉は要らないのさ。それで、私が欲しいのは肉。皆のご飯になるからね。それで、どうする?泊まる?泊まらない?」
「泊まります。よろしくお願いします」
「そうかいそうかい!じゃあ、夕飯にしようか」
…10分後。
今、俺は、戸惑っていた。
見たことのない肉が出てきた。
ステーキなのだが、色が青い。
焼いてあるはずなのに、色が青い。
なんとも食欲がわかない色をしている。
「これは、なんの肉なんですか?」
「あぁそれは、ブルードラゴンのさ。あっちに居るだろ?あの鎧を来てる男女。あいつらはSランク冒険者。冒険者の中でトップにいるんだ。こんな上等な肉、そうそう食べられるもんじゃないからね」
上等な肉。
俺は勇気を振り絞って口へ運んだ。
ふわぁ。なんだ、これ。
口の中に入れた瞬間蕩けてなくなった。
こんな肉、食ったことない!
「美味いだろ」
「はい!」
まともな食事をしたのは1ヶ月ぶりということもあり、がっついてしまった。
Sランク冒険者の方も女将さんもありがとう。
そうして、一夜が過ぎた。
俺はよっぽど疲れてたのか次の日、目を覚ましたのは夕方16時だった。
「おはよう」
「お、おはよう」
彼女、綺麗になってる。
「水浴びしたんだね」
むっとした顔になった。
「無理矢理、浴びせられた」
「はは」
「羨ましい」
「え?」
俺はまだ臭いが染み付いてるから彼女じっと見てくる。
「やっと、起きたのかい。かなり疲れてたようだね」
「すみません」
「いいさ、水浴びはどうする?」
「浴びます!」
水浴びが出来るのは宿の裏にある井戸。
自分で井戸から水を汲んでやっと水浴びが出来る。あの臭いとおさらば出来る。感激だ。
クシュン。
外での水浴びは寒いな~。
でも、やっとあの忌々しい臭いから解放された。
「あ、お兄ちゃん!無事だったんだね!!」
え?何が?
あの子がやってきた。
「一緒に居たお姉ちゃんが凄い表情でお兄ちゃんの部屋を見てたの。近づきたくても近づけなくて。起こそうにも起こせなくて。なんか、怖くて。お兄ちゃんになんかあったらどうしようって。大丈夫だった?」
うん。なんか、ごめんね。
13年間思い続けた彼女はただの変態でした 夕霧 @yu-4177
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