好きなあの娘から、結婚式の招待状が届いた。
青山喜太
────ブツン
自分の好意が誰かに対して加害になるとわかったのは小学生の時だった。
「藤宮って、タカコのこと好きらしいよ!」
「えぇ〜キモい」
なんて会話を偶然聞いた。放課後の教室の外だったか?
なんで俺の好意がキモいのか、そもそもタカコさんのことはあんまり好きじゃなかった気がする。
まぁ、そこはどうでもいい。
問題はそこではない。
誰かを好きになること、その感情を抱くことが罪なのだろうか? 俺はよくわからなかった。
でも、多分、そうだな気持ち悪かったんだろうな、俺は。
本が好きで、あまり外に出たくなかった。内気だった。話も上手くなかった。言葉もよく詰まってたしイジメられてた。
女子からすればキモかったんだ、今ならわかる。
でもしょうがない、しょうがないことさ。
俺は誰かを好きになっちゃいけない人間だったのだ。
もしかしたら今もそうなのかもな。
だってそうだろ? 俺は害なんだ。
─────────────ゴク
はぁ……いけないなこういうのは、少しハイになりそうだった。まぁでも俺からすればすげーと思ったんだ。
価値観の相違、カルチャーショックてやつさ。
その大きな衝撃は結構意図を引いた。
中学生ぐらいまでかな? ああ、そうだったな中学生もいい思い出が沢山だ。
俺は、キモかった。まぁだからどうしたという話じゃない。その頃からスクールカーストなんてもはや決まりきっていた。
いや、俺が気づいたんだ。なんとなく。
好きとキモいに別れてた。
中学生にもなるとさなんとなくわかったんだ、俺はキモい側で、好意を向けちゃいけない側なんじゃないかって。
誰かを好きになっちゃいけないんじゃないかってさ。
だって可哀想だろ? その、女の子が。
俺も当時好きな子はいた。中学生の時の、確かなんだっけな、そうだ! サヤさんだ。
俺、嫌だったんだ、俺が、俺の存在が彼女の顔を曇らせるんじゃあないかって。
俺はゴキブリが嫌いだ、理由は気持ち悪いから
じゃあもしサヤさんにとって俺が気持ち悪かったらどうしようって思った。
────────────ゴク
ああ、そっか、しょうもないな、結局俺は、ゴキブリだと思われたくなかったんだ。
俺は人間でいたかったんだ。ずっと人間として見て欲しかったんだ
気持ち悪い化け物じゃなくて。
だから俺は変わろうと思ったんだ、面白くてサイコーなやつに、本当は柄じゃないのにな。
わざと笑うのが辛かった。本当はそんなに楽しくないから。
いじられるのが辛かった。ありゃあやりすぎだったから。
静かに泣くのが辛かった。辛いのになんでやめなかったんだ?
─────────────ゴク……ゴク
はぁ、まぁ、なんだ、そんなキャラになろうと頑張ってた俺の目の前に現れたのが君だった。
結構頑張ってたんだぜ、君の知ってるお調子ものの藤宮は。でもそんなお調子もののキャラも貫けなくなってきた自分がいた。そんな時にさ君みたいな娘に会ったらさ誰でも好きになるって!!
ははは!
ハハハ……アハハ……君は……君は優しかったな、俺なんかと一緒のサークルに入ってても楽しそうで。俺とは違って本当に楽しんでた。
その笑顔に俺は……やられちまった。
好きだった、君がさ。
─────────────ゴク……ゴク……ゴトン
だから、さ、俺は君から離れた方がいいと思った。変わったと思ったんだが、俺は……。
結局怖かったんだ……君の笑顔が崩れるのが、俺のせいで……俺の……せいで。
なんで……こんなふうに思っちまうんだろうな。俺は、意気地なしだ。だからダメなんだ。俺は偽物だ、結局君の知る俺は偽物なんだ。
俺は、僕は、優しくもなんともない、ただの情けないつまらない男なんだよ。
僕も、人を好きになりたい、にんげんになりたいよ……!
─────────────ゴク
ハァ……。取り乱した。いけないなこんなんじゃ、
撮り直しかもな。
まあ、いいか。
でも君は結婚するんだってな、アハハ本当にダメじゃないか、好きになっちゃったらさ、アハハ……。
俺は、君が好きだ……。
でも俺は……。
はは……気持ち悪いな俺。
……俺さ……生きるのが楽しくなかった。でも君に会えたおかげで俺は、俺は楽しくなったよ。人生が愛せるようになったと思うんだ。
でもさ……でも、もし君のことを好きになっちゃいけない未来が来るとして、俺はどうやって明日を好きになればいい? 俺は、ははは……もうダメだな酔いが回ってきた。
俺は君が好きだ、これからもきっと変わらないんだ。でもさ結局俺は踏み出せなかっただから。せめて祝わせてくれ、
君の明日に、俺の好きがありませんように。
代わりに幸せが雨のように、降り注ぎますように。
─────────────ブツン
──午前未明、二十代男性が自殺しているのが発見されました。亡くなった男性は自殺直前にビデオを撮っており──
好きなあの娘から、結婚式の招待状が届いた。 青山喜太 @kakuuu67191718898
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます