君には


うわ〜、志楽くんだ〜


その霊体は俺の元へ飛び込む。しかしすり抜ける。確実に山野知香そのものだ。


知香か?


そうだよ!伝えたいことがあるって、志楽くんが言ってたから未練で残っちゃった★


確かに伝えたいことがあるのはほんとうだ。でも今更言えるわけないだろ。君が好きだなんて...


...言えねえよ。


なんで?


...


俺は黙ってしまった。そのことで彼女を悲しませたくない。二度と叶うことのないもの。


わかったわ、言いたくなったらいつでも待ってるわ。そのかわり!最後にの。手伝ってくれない?


俺は少し疑問に思ったが即答でYES。それよりも早く彼女を楽にしてあげたい。俺なんかのちっぽけな告白よりも。きっとその方がいいはずだ。



明日、いつもと変わらぬ一日が始まる。ある一点を除いては。彼女は仲良かった友達たちのところを転々としている。たまに俺にも喋りかけてくるが、無視。俺が独り言を大声で喋ってるみたいになるから。


そして、放課後...

屋上にて、彼女に問われる。


なんで!無視するの!


いや、一応お前は...霊体だからよ。他のみんなには見えないんだぜ?


...クッ


彼女は何も言えなくなった。きっと彼女も悲しんでるだろう。死んだという事実に。

そんな時に何か話し声が聞こえてきた。だから、思わず咄嗟に隠れた。


彼女と仲良かった女子グループだ。



ねえさ、今日、変なこと起きたんだ〜


どしたのー


授業中、寝ちゃったんだけど〜夢で山野知香が現れたのよー


嘘〜いつも、いじめてるから出たんじゃない〜


ほんっと、あいつ、生意気だったよね〜


そうねー...死んだから精々したのに、さっさと成仏してくれないかな〜


それなー


女子グループはキャッキャっと笑いながら彼女のことをディスる。俺は初めて彼女が苦しかったことに気づいた。俺は今の彼女に顔を向けられない。



そのままその女子グループは帰っていくまで、待った。そして、居なくなったと同時にすぐさま帰る。それまで、彼女らは知香の悪口ばっかりだった。


帰路に着く。俺は彼女に何も言い出せない。言い出せないまま、俺の足は自分の家へ向かわなかった。何かに導かれる様に。着いたのは、彼女の家...


なんで、俺は...


お願い、一回だけ体貸して!


そう言うと、彼女は俺の身体に入った。俺の意識は空になった。そこからの記憶は曖昧だ。女とちっちゃな子供が出てきて、なにやら喋ったような...


気づいた頃にはいつも公園にいた。横に彼女が座っている。俺はただ呆然と街の景色を見る。そのまま、数分沈黙が続き、彼女がついに口を開ける。


ねえ、わたしが死ぬ前にさ、伝えたいことがあるって言ったよね?


...


俺は何も言い出せなかった。


わたしに、告白する気だったよね?


俺は咄嗟に驚き、立ってしまった。それが如何に肯定する解答だとは気づかない。


いや、そんなわけ...


多分、断ってた。今日わたしが本来みんなからなんて扱われてるかわかったでしょ?あなたを不幸せにはできない。


俺は彼女の優しさにずっと守られていた。それなのに、俺は...


...不幸せ?なんて、どうでもいい!俺は...俺は...!!


すべてを語り尽くしたい。君へ向けた愛のメッセージを。俺の本気を。


お前が好きだ!!今までも、今も、これからも!


彼女は涙を流しそうな顔になった。悲しげな顔。でも、これでよかったはず。


...嬉しいよ、嬉しいけど...わたし、侑斗くんの幸せを1番願ってる。だから、こんな死に損ないのわたしより自分の幸せを願って!それがわたしの未練だから!


俺は涙を流さない。絶対に、彼女の前では。俺は思わず彼女の両手を掴む。


わかった、俺は必ず幸せになる。知香の分も、きっと...!!でも、君のことは忘れられない。これからも俺の胸に居続けていてくれ!!


そう語り、彼女は微笑み、薄く消えていく。光り輝く粉のよいに天へ舞い上がっていく。だんだん彼女の存在がなくなっていき、俺は感情のパラメーターがぶっ壊れていく。




数年後、俺は大学4年になり、無事就活で第一希望を内定決めた。さらには、将来を約束した彼女もできた。


でも、山野知香のことは忘れられない。多分これからも忘れてることはできない。


死んでもなお君には........




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死んでもなお君には アカサ・クジィーラ @Kujirra

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