壊れたオルゴール

夕日ゆうや

夜明けのチェンジャーズ

 壊れたオルゴールの音が鳴り響く。

 城内ではたくさんのご令嬢や貴族がダンスを楽しんでいる。

 皆一様に音楽に合わせて踊る。

 訥々とつとつと壊れたワルツに魅入られながら……。

 世界から音が消える。

 壊れたオルゴールの音だけが悲しく響き渡る。

 だがそれでもやめられないダンス。

 終わりの見えないダンス。

「攻撃されている!」

 アッシュがそう叫び、舞踏会に現れる。

 社交界の場にはふさわしくない軍人の衣服。

 俺はアッシュに続き、剣先をオルゴールに向ける。

「駄目だ。精神感応系のチャクラムは壊せば、人の概念すら破壊してしまう」

「そ、そんな!」

「今からオルゴールを直す。手伝ってくれ」

 先輩のアッシュがそう呟き、オルゴールを見やる。

「は、はい」

 これが精神を支配し、人という存在を崩壊させうるもの――魔導具。

 しかしこんなものを一体誰が、なんのために?

 疑問は尽きないが俺はアッシュの言われた通りにオルゴールを直す。

「やってくれたわね。チェンジャーズ」

 一人の少女が、悪魔の証である黒い翼を広げて舞い上がる。

「俺たちは過去から未来を変えていく。その先に願った未来がある!」

 チェンジャーズの口上を名乗り前にでるアッシュ。

 俺も前に出て剣を構える。

「やってやる!」

 俺が闘志に燃えていると、悪魔は煙のように姿を消す。

「逃げられたか……」

「じき、貴族令嬢も目を覚ますでしょう」

「ああ。おれたちはやり遂げたんだ」

 アッシュが柔らかい笑みを浮かべ、俺の頭の上に手を乗せる。

「よくやったぞ、アイク」

「ありがとうございます!」

「さ、気づかれる前に脱出するぞ」

 アッシュがその場から立ち去るのを見て、俺も足早に追いかける。

 俺たちは陰に潜むもの。

 この世界を根本から変えるもの。

 チェンジャーズ。

 まだ戦うべき相手が存在する。

 世界は変わらなければならない。

 より良い未来のために。

 今を変える力、可能性の力。


 夜明けは近い。

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壊れたオルゴール 夕日ゆうや @PT03wing

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