第5話 クスィVSユニゾン

 テスト期間を終えて、一週間後の日曜日。

 間家茶雨まけちゃう高校との模擬戦を開始することになった。

 相手チームは無敗神話を誇るチーム・ユニゾン。

 相手メンバーは、接近戦の荒田あらた、強肩のコジロウ、狙撃手の河合かわい、なんでもない武井たけい、へっぽこリーダーの旭人あさと。旭人以外は強敵と呼ばれている。

 対する僕たちは、筋肉質の雁津、あざとい聖良、木戸、飛び道具のアーニャ、しっかり者のはな部長。

 と頼りないメンバーである。

 顔合わせもかねて、僕たちはバトルフィールド前に集まる。

「よろしく」

 柔和な笑みを浮かべる旭人。

 お互いに握手をかわし、倉庫内に入っていく。

「よーい。スタート!」

 この戦いで僕は勝つ。そして全国を目指すんだ。そのためならどんな努力も惜しまない。

 新人のアーニャの護衛をすることになった僕は、障害物の縁にそって移動を始める。

 アーニャも見様見真似で応じる。

 さすがに二メートルの壁を越えようとは思わないらしい。

 僕は気配と感で障害物の隙間からハンドガンの引き金トリガーを引く。

 ヒットした音が聞こえ、相手チームの一人が手を上げてヒットした人のいる場所へ移動する。

「まずは一人」

 遠くで発射音が聞こえてくる。

「あーん。ミラクルパーフェクト♡」

 あざとい聖良がやられたようだ。

 しかしこの地形ならスナイパーは役に立たない。

 問題は接近戦の荒田。さっき撃ったのは武井だったから、脅威はない。

「イッタイなー」

 河合の可愛らしい声が聞こえてくる。

 BB弾と言えど、当たればあざになるくらいには痛い。

「しまった! やられた……。頼んだ」

 はな部長が大声を上げる。

「くっ。参った!」

 雁津の声も聞こえてくる。

 残されたのは僕とアーニャだけ。

 さすが接近戦の荒田。

 音によるとここから近い。

 僕は前に出て一気に肉薄する。

 荒田の腹にハンドガンを突きつけ――放つ。

 ヒットした荒田は悔しそうに顔を歪める。

「くそ。負けだ」

「勝った!」

 興奮している僕の脇腹にBB弾がヒットする。

 へっぽこリーダー旭人の攻撃だ。

「ここまで楽しませてくれてありがとう!」

 旭人が高笑いをする――その一瞬を見てアーニャは壁を駆け上がる。

 そして死角のない空中からP90の引き金トリガーを引くアーニャ。

 頭上からの攻撃は予測していなかったのか旭人は被弾する。

「……何が」

 戸惑いを覚える旭人。

 どうやら旭人は能ある鷹は爪を隠すタイプだったらしい。

「被弾、したのか……?」

「そうね」

 アーニャが静かに声を上げる。

 手にしたP90の銃口は旭人に向いたまま。

「この小娘がーーっ!」

 怒り狂った旭人はアーニャに向かっていく。

 僕は慌ててアーニャをかばう。

 旭人の拳は僕の右頬にぶち当たる。

「ぐっ」

 痛みでうめき、顔を歪める。

「貴様さえいなければ!」

 声を荒げ豹変ひょうへんした旭人。

 まずい。僕は受け止めた拍子に転んでしまった。

 旭人は再びアーニャに殴りかかろうとする。

 そこを武井が抑え込む。

「落ち着け。負けたんだ……」

「俺様が負けた……?」

 焦点の合わない目が恐怖を与える。

 まるで勝つことを予測していたかのように。

 旭人はぐったりとし、まるで人形のように足を投げ出していた。

「やれやれ。チーム・クスィも強い新人を獲得したようだ」

 旭人というリーダーの代わりに武井が応じる。

「素晴らしい戦いだった。今後もよしなに」

 そう言って手を差し伸べてくる武井。

 僕はそれに応じると、ようやく意識を取り戻した旭人が口を開く。

「今度は負けねーからな」

「それはこっちのセリフ」

 一度見た相手には絶対に負けたことのない僕に挑もうなどと。

「はん。今回は負けだ。認めてやる。だがな、全国で勝つのは俺様だからな!」

「いいよ。かかっておいで」

 僕は挑発するように言うとニンマリと笑みを浮かべる。

「くそっ」

 旭人はエアガンを投げ出し倉庫の外に向かう。

 僕たちも外に出ると華部長たちに歓喜の声をかけられた。

「よくやった! 木戸くん」

「我らの誇りだな」

「ふふ♡ 撃ち抜かれちゃった♡」

 腕に絡みついてくる聖良。

 それを好ましく思わなかったのか頬を膨らませて、もう一方の手に絡みついてくるアーニャ。

「なによ?」

 聖良がアーニャを睨む。

 それを受けたアーニャも睨み返す。

 あんたら仲いいな。

 バチバチと火花を散らしたところで、僕たちはチーム・ユニゾンと握手をし、帰路につく。


 僕は一応、保健室で殴られた箇所の治療を受ける。と言っても晴れているので、化膿止めを塗るくらいだけど。

 ガラッといって保健室に入ってくるアーニャ。

「ごめん。わたしのせいで」

「気にすることじゃないよ。あの旭人が悪いんだ」

「それもそうね」

 淡白なご感想だ。

「ありがと!」

 とびっきりの笑顔を見せるアーニャ。

 この笑顔のためならなんでもできる気がした。

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