結婚報告

長島芳明

結婚報告

 ついにこの日が来たか。



 娘が上京して10年。



「お父さんに紹介したい、大切な人がいる」



 と連絡が来た。妻はその「大切な人」を知っているようだった。



 やっぱり男親は信用出来ないんだな、うん。娘が小学六年生の時に「お父さんと洗濯物を一緒にしないで」と言われて以来。同じ家に住むのにろくな話をしてこなかった。進学も就職も母親主導だった。




 とにかく大切な一人娘。先に生まれた長男は「弟が欲しかったので嬉しいな」と呑気なもんだ。



 チャラ男だったらどうするんだよ。売れないお笑い芸人や、よく分からないビジネスをしている男だったら。



 盆に帰ってくるので、先に墓参りをして先祖に祈った。マナーが違うかもしれんが、我が家にとっては一大事だ。




 やがて居間で待っているとインターホンが鳴った。お母さんと長男に迎えに行かせた。父親の威厳として俺はけして座布団から立ち上がらん。



「おー。そっちだったのか」



 長男が嬉しそうな声を上げた。



 どっちなんだよ!



「玄関で話するのもなんですからお上がりになって」



 やがてドアが開くと、娘の横には凛とした女が立っていて頭を下げて自己紹介を始めた。

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結婚報告 長島芳明 @gunmaNovelist

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