10話
「啓、このキーホルダーがいいぞ」
「ご自分で買ってください」
「いや、ただ可愛いから勧めているだけだ」
ちなみに猛だけじゃなくて女の子二人組もここにいる、同じようにお土産売り場を見ているのが現状だった。
こういうときに限ってこちらのところばかりに来る彼は天邪鬼だ、それと杉野さんももう少しは頑張ってもらいたいところだと言える。
「それより先輩としてお手本を見せてくれよ」
「見せたら頑張る?」
「おう」
それならとグッズを見て可愛いとか言っていた千織の手を掴んで連れてきた、が、千織的には不満があるみたいで「いきなりなにをするんだよー」と言われてしまったけども。
「勇気を出すタイミングが違うんだよなぁ」
「とまあこんな感じでできるよ」
「よし、やってくる」
声をかけてからにした方がいいなどといちいち言わなくてもちゃんとやっていた、千織は頭の後ろで手を組んで「そろそろ告白をしてもいいのにね」と先程までとは変わって楽しそうだった。
「ちょっと別行動をしない? なんかいい雰囲気だから決めちゃうかも」
「んー、今日は四人で来ているからいいよ」
「でも、気が変わるかも――分かった分かった、だからその目はやめてよ」
中々上手くいかないものだ、でも、帰ってからでも遅くはないか。
別行動をしようとか言っておいてあれあけど多分その方が気持ち良くやれる。
「それよりほら、なにか言い忘れていることがあるでしょ」
「きらきらしていていい場所だよね、静かなのもいいよね」
入場料は高いものの、それだけの価値がある。
二人もいてくれることで気まずくならないのもいい。
「千織もいつもと違う感じがするんだ」
「そりゃそうだよ、だって髪型を変えてみたりお化粧をしてみたりしているんだから」
「そういうのじゃなくて黙っていると美人さんに見えるというかさ」
髪がそれなりに長いのも影響しているのかもしれない、大人びていて振り向いたときなんかに驚くことになる。
でも、口を開けばいつもの可愛い彼女に戻るんだからすごい。
「いまのなんか馬鹿にされていないかな?」
「されていないよ、するわけがない」
「ふーん、で、結局志乃舞みたいな奇麗系が好きって話?」
「違うよ、僕は千織が好きなんだ」
「どうだか、その場しのぎで適当に言っていそう」
ちょっと前の僕からすればかなり変わっているからそう言いたくなる気持ちも分からなくはないけど適当に言っているわけではないから勘違いをしてほしくなかった。
「本当だから」
「……なに水族館で欲情しているの」
「いっ!? ち、違うよ……」
「はは、そういうことにしておいてあげるよ」
耳を引っ張る前にそういうことにしておいてほしかったものの、なんとか抑えて追ったのだった。
140作品目 Nora @rianora_
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