世界戦争のハッカーたち。
夕日ゆうや
第1話 予兆
鏡面電磁誘導振動波、起動。
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始動。
鏡面電磁場、生成を確認。
▼▽▼
救急車と消防車のサイレンがけたたましく鳴り響く。
「また火事かよ」
「空気も乾燥してきていますからね」
「でもこの火事は、人為的なものだ。気をつけろ、ナッシュ」
ギル先輩がそう言いギターケースを取り出す。
中には《
俺たちはスナイパーだ。警察の公安、それとはまた別の組織。陰の組織『
車の中で煙たい紫煙を吐き出すギル。
「タバコ、やめたんじゃなかったですか?」
俺は煙を手で払い呟く。
「ん。ああ、すまん。ストレスが酷くてな」
「心療内科をおすすめします」
さて、と切り出すギル。
「今日の獲物は連続発火事件の犯人だ。取り押さえるぞ」
ギルはそう言い被害者家族の構成や建築物の様子をタブレットに映す。
「反抗手口はいたって簡単だ」
そう言ってタブレットをスライドさせるギル。
それを見て断言する俺。
「遠隔操作可能なソーラーパネルのある家ばかりじゃないですか……」
「そうだ。これはハッキングによる火災と断定できる」
「犯人は?」
首をふるふると横に振るギル。
まだ特定できていないとなると面倒なことになるぞ。
「そこでお前の出番だ。入ってこい、アリア」
無言で車に乗り込む少女。
肩口で切りそろえた黒髪、赤を基調とした和装姿に扇子を掲げる少女。
まだ年端も行かぬ少女がなぜ?
俺の疑問を消し去るようにアリアが呟く。
「226ポイントで火災発生。奴らは鏡面に電磁場をつくり太陽風を受け止めて爆発させる手口よ」
理屈はよくわからないが、真剣な眼差しだ。アリアは何者か、察しがついた。
「それで、アリアさんはどんな手段で対抗しようと?」
「アリアでいいわ。わたしもハッキングする」
予想通りの答えだった。
隣で煙りをたくギルに恨めしい顔を浮かべてアリアはタブレットにつないだキーボードを叩く。
…………。
「よし。予想通り226ポイントで火災発生。ハッキングの場所を特定した」
「マジか!?」
「本当よ。ナッシュ」
「さあ、226ポイント――
ギルが居場所を警察無線で伝えると、今度はハッキング元に向かうよう指示を出す。
「うん? どうなっている」
自動車の向かっている場所が変わった。
「あー。乗っ取られたわね」
「ええ! アリアなんとかならない?」
「無理よ。ネットワークを遮断して、マニュアルで動かすしかないわ」
ネットワークでつながった自動車は交通網を
一方で災害時におけるマニュアル機能もついている。
「おっしゃ、おれの出番だな」
ギルが袖をまくり、運転席でステアリングを手にする。
オートからマニュアルに切り替えて、アリアの言う場所を目指す。
▽▼▽
量子インターフェイス起動。
システムオールグリーン。
電磁場光共振部、再試行。
『これから人類の未来がかかる大戦争の始まりだ』
『彼らは気がつくのでしょうか?』
『気づいてもらわねば困る。人類の行く末がかかっているのだから』
電子音が鳴り響く。
世界が滅びるまであと三日。
エナマス望遠鏡、再起動。
おおぐま座、確認。
システム正常に起動。
人類救済システム起動。
▽▼▽
「どうなっている。なぜ勝手にシステムが暴走した? 分かるか?
「分かりません。エラーコード1219」
「システムが乗っ取られています。これでは!」
システムロックするしかないというのか。
だがなぜこんな自体になった……。
僕はうなり嘆く。
ここはエナマス望遠鏡の基地局。
望遠鏡の軌道がずれた。そして北斗七星に向けられたそこにはとある映像が浮かんでいた。
「これは……?」
生唾を飲み下す
▽▼▽
噴射式双発推進装置、起動を確認。
大陸間弾道ミサイル、打ち上げまで十二時間。
発射タイミング合わせ。
核弾頭、セット。
発射タイミング、セット。
軌道、レーザー、ガイドビーコン。
S17からT90まで起動を確認。
全人類に告げる。
これは人類の存亡と威信をかけた大戦争の始まりである。
諸君らの命を賭けて、ことにあたって欲しい。
そうでなくては私たちが生きている意味がない。
量子コンピュータ起動。
全システムオールレッド。
アメリナ地方、ネットワーク掌握。
アイデル地方、ネットワーク掌握。
次いでNT地方、ネットワーク、攻撃開始。
全世界のネットワークに対して攻撃開始。
私たちの行く道へ。
▽▼▽
「アリア。どうなっている?」
「分からないわ。ハッカーは場所を移動したとしか……」
アリアのハッキング技術を持ってしても、それくらいしか理解できていないらしい。
「これだけ多くのネットワークを使うとなると……」
何やら熟考するアリア。
俺には分からないが、タバコを吹かしている時間はありそうだ。
気がついたアリアは何やらタブレットのキーボードを打ち始める。
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