この会社のサラリーマン、みんな幽霊!

ピチャ

この会社のサラリーマン、みんな幽霊!

 私は普通の会社に就職したはずだった。上司には叱られ、同期とは愚痴りながら日々の業務をこなしていく・・・。ところが、この会社には重大な秘密があったのだ。

 それが、みんな幽霊だということ。

ブラックとまでは言えないかもしれないが、決してホワイトではないこの会社、みんな疲れたり嫌になったりするときもあるだろう・・・。そう思っていたのだが。

彼らは元気ではないものの、淡々と日々をこなしていく。どうして倒れないのだろう。

そういう質問を同期にしてみたことがある。そうしたら、

「それは、この会社の人たちはみんな幽霊だからだよ」

という答えが返ってきた。

「えっ、じゃあきみも?」

「そうだよ」

にわかには信じられないが、そうだとすると納得がいく。

「昔は僕も人間でね、どうして――と思ったものだよ、今のきみのように」


 「幽霊になった経緯は」

気が付くと私はその話に食いついていた。

「さあ、ちょっとしたことだったんじゃないかな」

彼が隠し事をしているのか、自分でもわからないのか、私には判断できなかった。

ただ幽霊同士は相手が幽霊だということが認識できるらしい。彼曰く、毎年人間が入ってきて、幽霊になっていくのだと。今の人間は私一人らしい、まったく気づかなかったが。

「幽霊であること、人間がいること、気にしていないんだけどね」

そうは言ったって、人間の身としては気になる。どうして私はこれから幽霊になるというのだろう。いつ、どうやって、その「ちょっとしたこと」は起こるのだろう。

 違法なことじゃないだろうか。安全面は確保されているのだろうか。

疑惑は尽きないが、彼は決定的なことは何も話してくれなかった。


 幽霊はどうやって生活しているのだろうか。

住所は存在するのか。戸籍は。貯金もできるかわからない。

あの日確かに彼は幽霊と言っていたのに、周りの誰に聞いてみてもそんな話は知らないと言われてしまった。彼はもう離職していて、一社員である私には行方が分からない。

一体何だったというのだろう。

彼の冗談にしては、本当だと疑わせるような謎の現象は、私の周囲でたびたび起きている。

ただ、それを話しても誰も信じてはくれないだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

この会社のサラリーマン、みんな幽霊! ピチャ @yuhanagiya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る