史上最強の推し活小説・書籍化さる

与方藤士朗

史上最強の推し活小説・親馬鹿を極めし「推し」の父親

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 2022年7月。

 史上最強の推し活小説が、密かに発売された。


 かの著者・某は、当年とって53歳(誕生日到来基準の満年齢)。


 彼は、大学を出立ての若い頃、とあるアニメに浸っていた。

 その名も、


美少女戦士セーラームーン


 彼はそれゆえに、悪名を世間に轟かせたという。

 彼の母親がどれほど呆れていたかは、あえて、述べないでおこう。


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 時が過ぎ、2022年。

 彼は、小説としては3作目となる著書を出版した。

 題名は、あえて、申すまい。


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 その小説内には、確かに、彼本人と思しき人物が登場する。

 彼には、今どきの言葉で言う「推し」がいる。


 2021年に放映されたトロピカル~ジュプリキュアのキュアパパイア

 普段は、中学2年生の一之瀬みのり。

 彼女の家庭については、作品上では母親のみ描かれた。

 しかし、父親や他の親族は描かれていない。


 そこで彼はなんと、自らをして、その父親を名乗り始めたのである。

 彼は、ことある毎に述べている。


わしの娘(=隠し子)のみのりん


 みのりんというのは、彼女が作品上で後輩から呼ばれている名である。

 そのみのりんの何と、父親が、彼なのだというわけである。


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 彼は、自らを一之瀬みのりの父親と名乗っただけでは終わらせていない。

 何と、彼は・・・、


My Story


 キュアパパイア・一之瀬みのりの曲を・・・、

その小説のエピローグに、全部を引用したのである!


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 推し活を繰り広げる者多しと言えども、自らの小説にその「推し」をカミングアウトするだけにとどまらず、その「推し」の曲を作品中に引用までする人物が、他にいるであろうか? 

 過去、そんな人物が、いたであろうか?


 しかも、その小説は同人誌などではなく、れっきとした商業出版である。


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 かくして、史上最強の推し活小説は、今日も、密かにネット上で販売されている。


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へびのあし

 なんとその某は、とある小説サイトに、その「推し」の作品上における小説


マーメイド物語


につき、何と、その小説を読んでいないにもかかわらず、書評とも創作論ともつかぬ作品群を書いているという。

 彼は、言う。


~ あおぞら中学校文芸部・一之瀬みのりが「マーメイド物語」を書いて文芸部の会誌に掲載されたという事実は、落合博満が3度にわたる三冠王を獲得した記録と、事実として同等の価値を持っているのである。


 ここまで、「親馬鹿」を極めた推し活をする人物が、他にいたであろうか?


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注:この作品は、小説家某こと、与方藤士朗氏の第3作

「第三の父母 ~親と子の蒼いフォトグラフ」(つむぎ書房・2022年7月)

 の存在をモチーフにして書かれたものです。


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史上最強の推し活小説・書籍化さる 与方藤士朗 @tohshiroy

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