彼のにおい
結騎 了
#365日ショートショート 351
主人が最近、臭う。
でも仕方がないのかもしれない。彼もいい歳だし、こういうの、加齢臭っていうんだっけ。
初めて出会ったのはもう随分と前のことだ。先に好きになったのは私の方だった。懸命にアプローチして恋人になったっけ。結婚してからも、私からの矢印の方がいっつも太かったけど。でも、それでも。主人は私を愛してくれている。そうに決まってる。
会社の若い女の子に色目を使われたり、行きつけの小料理屋のママから誘われたり、主人はとにかくモテる。歯がゆいくらい、モテる。でもね、今はもう私だけの男。この家でふたりで過ごすの。これから、髪も抜け落ちて、体も痩せ細って、力尽きていくと思うけど。ずっと一緒にいようね。ふたりで、ずっと、一緒に。
あっ、もう。いつまで寝てるの。ほら、眼球にハエがとまってるよ。
彼のにおい 結騎 了 @slinky_dog_s11
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます