35話 閑話 -2-

「うん? 何をしているんだ、リーゼリット嬢?」


「相変わらず、また意味のわからんことをしているなリーゼリットは」


「まあまあ。リーゼリット殿には何かしら意味のあることでしょうから」


 ──建国200年記念祭のデビュタントから数日後。


 授業の空き時間に、私と推し3人で行っている勉強会。

 今日も推しのシュジュア、ラドゥス王子、ターナルから、私に向けて三者三様の意見が飛び交っている。


 推しとともに勉強を頑張っていた私であるが、難問の途中で行き詰まってしまったこともあり、日々の日課となっている体操をおこなっていた。


「この体操ですか? これは『ラジオ体操』という曲目の運動ですわ。先程勉強に行き詰まってしまいましたので、少し休憩を挟んでおりますの」


「「「ラジオたいそう??」」」


 推し3人が疑問符を浮かべている。


(ああ、またやらかしてしまったわ!? この世界にラジオがあるわけないわよね! ということは、その体操もないわけで……)


「……"天啓"にありました、とある人間の記憶の一つにあった体操ですわ」

「そんな大層な体操があるのか!?」


 ラドゥス王子が大いに驚いている。

 前世の頃は大層であることの概念すらなかったが、日本全国の人間が知っている体操だと思えば、たしかに大層かもしれない。


「とある人間の記憶では、民衆の皆が知っておりました。健康にも大変効果がある、画期的な体操です。」

「民衆の皆が知っているだと!?」

「なるほど、健康にも効果があるのですね」


 シュジュアが驚くのも無理はない。

 情報屋をやっているシュジュアからしたら、老若男女全員が知っていることの方が珍しいのだろう。


 それと、ターナルが体操に興味を持ってくれた。

 健康を重視する面があるターナルにとっては、この体操と相性が良いのかもしれない。


「そういったわけでして、この体操は健康にも息抜きにも相応しい体操ですの。ですから、こうして私もただいま運動中なのです」


 それだけ言って体操の続きをしていると、なぜやら推し3人も体操を真似しだした。

 推し3人は覚えも早く、私がおこなっている体操をもうマスターしだした。


「動きやすく、覚えやすい。民衆の皆が、幅広く知るような体操であるのもわかる」


「単純な体操に思えるのに、体がポカポカしてきました! 素晴らしい運動方法ですね」


「とある人間の記憶に残るような体操であるのも頷ける。これからは、勉強の息抜きに取り入れてみるか!」


 シュジュア、ターナル、ラドゥス王子が、何やらそれぞれに納得してしまった。

 どうやら『ラジオ体操』に、推し3人ともご満足いただけたようだ。


 そういうわけであって、勉強の休憩の合間に私と推し3人で『ラジオ体操』をすることが日課になった。



 この日課がどこかから漏れだして、学園で体操が流行りだすのはもう少し後のことである──。

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