関門突破
毎年、母校から冊子が届く。デザイン学校なので、卒業生がデザイナーとしてどんな活躍をしたか、どんなイベントを開催したか。たいてい、そういった内容だ。
学生時代はこの冊子を見るたびに、デザイナーが遠い存在に感じていた。しかし、自分がデザイナーになった今では近すぎる。最初は『自分の常識が通用しない別世界』だったのも、最近では『自分の常識』と『業界の常識』を両立できるようになってきた。
私は適応力が低い方だと思っていたけれど、意外となんとかなるものらしい。……学生のときも、これくらいの適応力があればよかったのに。
郵便受けから学校の案内を取り出すと、まったく同じ内容のものがもう1部入っていた。毎回のことなので慣れたけれど、学校側ももう少し融通が利かないものかと思う。
同じ内容の郵便物には、両方とも左上に私宛のシールが貼られている。私が学校関係者である証だ。異なる点といえば、名前の上に書かれている6桁の番号だけ。
2年制の学校を1年休学して、1年就職浪人した場合は大卒と同い年になる。だから、先輩は私の年齢を知っている。
そして、卒業して2年以内の私は歴とした第二新卒だ。そこに嘘偽りはない。ふたつあるうちの、17から始まる学籍番号がその証拠だ。
それでも年齢を聞かれたときは、こう答えるようにしている。
女性にその話題はタブーです、と。
その話題はタブーです 夕季 夕 @yuuki_yuu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
モグラは今日も夢を見る/夕季 夕
★5 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます