偉い人の本音

PURIN

第1話

 これから会見が始まる。とても重要な会見が。

 私は眼鏡を上げると、壇上へと歩を進めた。


 ああ、本当は嫌だ。

 「国民の皆様が苦労して頑張って稼いでくれたお金を意味不明なことに無駄遣いします。でも足りないから、ただでさえ生活苦だろうけどもっと税金を上げます。

 これは皆様のためにやってあげることなんです。理解してね。国民の皆様をいじめることしか考えてない国だけど愛さないとダメだよ」


 こんな、まともな神経を持っている人間が言うはずのないふざけたことを、堂々とほざきたくなんてない。

 法律も何も無視して自分勝手なことをするなんて、偉い人失格だ。

 そんなことに使うお金があるなら、今まさに困っている国民の皆様を助けることに使わなければならないのに。

 

 けれど私は決めたんだ。

 国民の皆様に私をたくさん恨んでもらおうって。

 私を恨んで、そうして「こいつみたいなバカになっちゃダメだ。私達はちゃんと勉強して、平和ないい国を作らなきゃ」と思ってもらおうって。

 つまり、私は人生をかけて国民の皆様の反面教師になるんだ。

 そのためには、とても人の心があるとは思えないような言動をしないといけないんだ。


 決意を胸に、私は口を開いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

偉い人の本音 PURIN @PURIN1125

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ