あたたかな光を浴びるまで
「ん-……」
日が
今は、何時かしら? まあ、何時でもいいけど。
部屋の中は暗いけど、
家の中をちょっとだけ、歩き回ってみようかしら。
そのままじっとしているのもなんか違うと思ったので、
布団を抜け出すと、寒さが
厚手の服を
部屋を出たら少し寒くなった気がするけれど、多分気のせい。早くも布団に
階段を下りた先は、店のカウンターになっている。もちろん、こんな時間には誰もいない――はずだった。
なにか、いる。
階段を下り切った私は、それを見つけてしまった。それが
でもその
「お、珍しいな」
ご主人は私を見つけたようで、私に声をかける。
「ご主人も珍しいんじゃないの? こんな時間にここに居るなんて」
「まぁな。珍しく目が覚めちまった。サフィーは?」
「同じようなものよ」
目が覚めて、そのまま寝ようと思っても眠れなさそうだったから、なんとなくその辺を歩きたい。そんな、よくわからない気分でここに来たのだから、理由なんてない。
「コーヒー、飲むか? 温まるぞ」
「苦いのは
「ミルクとは、ちょっと
「いいじゃない。元々猫なんだし。それに、ご主人も猫舌じゃない。人のこと言えないんじゃないの?」
「はは、そうだな。それじゃ、猫同士ちょっとゆっくりしてこうぜ」
そう言うと、ご主人は指を振って私の飲み物を作り始める。別に変な意味があるわけじゃない。魔法で、直接見えないものを動かしているだけなのだ。
私は、ご主人の
外は、雲の無い夜明け前の空が広がっている。
「よーし、できたぞ」
しばらく空を
「はい、サフィーの分だ。ちと熱いかもしれんから、飲むときに気を付けてな」
「ありがとう、ご主人」
早速、ご主人のくれた飲み物に口をつける。
あたたかさと甘さが、真っ先に口に広がる。その少し後に、ほんのりと苦味が追いかけ来る。
「あったかい……」
外の寒さと、ご主人がくれたあたたかい飲み物。目の前に広がる、あたたかな光の混ざるサファイア色の夜空。
ご主人と、最初に呼んだ時のことを思い出す。
「……この空、あの時の空みたいね」
あの時の私も、こんな気持ちだったっけ。あたたかいものが体を
「あのとき……?」
ご主人は、私の目を
「――あぁ、そうだな。今は寒さで
思い出してくれたみたい。
「外は寒い。でも、体はあたたかいわ。ねぇ、ここで日の出を見ない?」
「あぁ、しばらく見ていようか。この格好だとあんまり長く居られそうにないが」
「もっと着込めばいいじゃない」
「そうだな。それじゃ、魔法で持ってくるか。サフィーの分もな」
私たちふたりはそのまま、夢の世界に戻らずに日が昇るのを待つ。
歩んだ旅路の記憶を、ふたりで
その身体が、あたたかな色の陽光を浴びるまで。
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