一日限りの青い花
今日も店先には雨のカーテンが引かれ、遠くの山々は
こんな日の店は
この長靴を
サブちゃんは元気が良すぎて、ずっと一緒にいると
でも、こんな退屈な日にはその存在が丁度いい。
そんな状態になるくらいには、この時期の店番というのは何も起こらない。カタツムリの上に乗っているように、全く変わらない景色の中をただただゆっくりと時間が流れていくのだ。
「サフィー、ヌシはどこ行ったか知らない? ヌシが約束の時間になっても来ないんだよぉ……さっきまで探してたんだけど、見つからないの」
「どこ行ったかしらねぇ……」
なぁんだ、ご主人を探してるだけなのね。
若干の期待は、風船のように
私のご主人は
忘れん坊のサブちゃんは、ご主人がよく釣りに行くということを覚えていないのだろう。
案の定、靴箱の方を見ると、
「多分釣りに出かけたわ」
予測を導くのに、時間はかからなかった。
「はぁ? 釣りに出かけただって?!」
驚くサブちゃん。やっぱり忘れてたのね。
「いつものことでしょう?」
「そう、だっけ? 覚えてないや!」
「それで、ご主人に何の用事があるのかしら?」
「えーっとぉ……」
考え込むサブちゃん。
しばし思考を
「忘れた!」
期待通りというか、鳥頭である彼のいつもの回答だった。
「とりあえず見つけてくる!」
「ちょっと待っ――」
「これあげるっ!」
私は止めようとしたけれど、サブちゃんは勢いよく店から出ていって、降りしきる雨の中に姿を消した。
毎回大事なことをすぐに忘れるのに、人の居場所はわかるのよね。不思議な子。
頬杖をつこうとすると、
……まさか変なもの、置いていったんじゃないでしょうね?
恐る恐るそれを感じたところに目を移すと、雨に
カウンターに残された、雨に濡れたツユクサ。ご主人を探している途中に折ってきたものだろう。
雨の
そんな、彼からの小さな
たまたまかもしれないけれど、尊敬の意味がある花を選ぶなんて。それに、この花の美しさは夕刻までしか保たれない。そういうところも含めてサブちゃんらしい。
カウンターの裏から空き
掛け時計を見ると、午後2時を回ったところで、まだまだこの仕事の終わりは見えない。
先程とは違う、夕方には
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